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420年の歴史 薬用養命酒 健康志向で再評価

   昔からなじみのある薬用酒「薬用養命酒」。瓶のデザインといい、独特の味といい、不可思議な効果がありそうな感じにさせられる。実はこの養命酒は約420年前に信州の山奥で作られた。それが今でも継続しているだけでもすごいが、昨今の健康志向の高まりで再び見直されつつある。

(以下の記事は、養命酒の歴史と現状について、養命酒製造株式会社経営企画部の大久保裕介さん、笠原良太さん、岩渕由香利さんのお話、同社ホームページ、広報資料などをもとに作成しました)

 

信州伊那谷で養命酒発祥

 養命酒は、慶長7(1602)信州伊那谷の大草(現在の長野県上伊那郡中川村大草)の塩澤家当主、塩澤宗閑翁によって創製されたと伝わる。(写真は養命酒発祥の地にある石碑。)

 伝説では、慶長年間のある大雪の晩、塩澤宗閑は雪の中に倒れている旅の老人を救った。老人は塩澤家の食客となったが、3年後に去る時、「海山の厚きご恩に報いたく思えども、さすらいの身の悲しさ。されど、自分はいわれある者にて薬酒の製法を心得ている。これを伝授せん。幸いこの地は天産の原料も多く、気候風土も適しているから・・・」と薬酒の製法を伝授した。塩澤宗閑は牛にまたがって深山幽谷をめぐり、薬草を採取して薬酒を造りはじめ、慶長7年、これを「養命酒」と名付けたという。


伝説を描いた絵


大正時代に企業化、平成元年東京に本社

 江戸時代、塩澤家では、養命酒を近くに住む体の弱い人や貧しい人々に分け与えていた。その評判が高くなるにつれて、養命酒の名は伊那谷の外へも知れわたり、山越えをして求めにくる人が次第に多くなってきた。

 塩澤家に残る古文書には、文化10年(1813)、当時の尾張藩主が養命酒の製法や内容についてたずね、できあがるまでに2300日も要すること、また製法は一子相伝の秘法であったことなども記されている。

 大正12年(1923)には、それまで塩澤家の家業だった製造事業を株式会社天龍舘として会社組織に改め、全国に紹介をはじめた。これが、現在の養命酒製造株式会社の創立。

その後、大正14年(1925)に東京・渋谷に支店を開き、養命酒の名は全国へ広まり、愛用者の数も年を追って増加した。

 昭和30年(1955)、株式を上場。昭和47年(1972)、長野県駒ヶ根市に製造工場を移設。平成元年(1989)、東京・渋谷に本社ビルを建設した。令和2年(2020)には台北に支店を開設した。


駒ケ根工場

東京・渋谷の本社

養命酒とは何か 14種の生薬 主原料は烏樟(ウショウ)

 薬用養命酒は14種類の自然の生薬を配合した薬用酒(医薬品であり酒でもある)だ。

 アルコールの働きで、薬効成分が体内を広く巡り血行や代謝を改善し、からだ全体を温める効果があるという。

原料となる生薬は烏樟(ウショウ)、ウコン、人参、杜仲、桂皮など14種類。このうち、烏樟はクロモジという木からとれる生薬で、60ml594mgが含まれる最大の原料で、ウショウを含有することが薬用養命酒の特徴といってよい。

 クロモジは、クスノキ科の落葉低木。全国の山地の、杉など高木の陰などに自生する。鎮静効果が期待されるリナロールを主成分とするよい香りがし「和製ハーブ」とも呼ばれる。古くから楊枝、香木、生垣、枝を煎じたお茶などに利用されてきた。養命酒製造は全国の森林組合などと提携しクロモジを調達しており、クロモジの最大の需要家という。


クロモジ

 薬用養命酒の効能としては「次の場合の滋養強壮:胃腸虚弱 食欲不振 血色不良 冷え症 肉体疲労 虚弱体質 病中病後」とうたっている。特に、肉体疲労、冷え症などに効果を感じるとのこと。

 薬用養命酒はアルコール度数14度あり、用法・用量は一日3回、120mLが基準だがすぐ車に乗ると酒酔い運転となる。酒ではあるが医薬品であり、一般の酒店やスーパーでは販売できず、もっぱら薬局やドラッグストアが販路となる。

製品の多様化

 伝統の養命酒が昔も今も中核商品であることに変わりはないが、近年は製品の多様化を進めている。

 平成18年(2006)には生薬を配合したタブレット状の錠剤「幸健生彩」を発売。2010年にはハーブを含むリキュール「ハーブの恵み」を販売開始、商業施設にレストランを併設した「くらすわ」を長野県諏訪市で開業した(「くらすわ」は現在4店舗)。

 養命酒製造は平成17年(2005)に大正製薬と資本・業務提携しており、その成果の一つとして両社が共同開発、大正製薬が製造するドリンク剤「ハーブプラス Herb+」を2011年に発売した。

 その後、酒類では「琥珀生姜酒」、「はちみつのお酒」、「高麗人参酒」などを販売。食品では「食べる前のうるる酢」、「生姜黒酢」などを手がけてきた。現在、最も力を入れているのは、クロモジを使った製品で、酒類ではクラフトジン、食品ではのど飴だ。クラフトジン「香の森」は国際的酒類品評会「International Wine & Spirit Competition(IWSC)2021」において金賞を受賞した。


クラフトジン香の森

クロモジのど飴

 養命酒製造は昭和36年(1961)埼玉県鶴ヶ島市にブドウ糖の工場を開いたが、平成18年(2006)に閉鎖、跡地に太陽光発電所を建設した。東京ドームほどの広大な敷地で、年間2625kh(一般家庭400500世帯分)の電力量を発電できるという。

 製造工場である駒ヶ根工場には見学コースが設けられ、養命酒の歴史や生薬の展示館もある。敷地の森は「養命酒健康の森」として散策できる。

健康生活に貢献する

 養命酒製造の業績は、長期的に低落傾向をたどってきて、特に平成29年(20176月の酒税法改正で店頭価格が500円程度上昇したことから売り上げが落ち込んだ。歴史の古い養命酒は「親が飲んでいた」とか「昔家にあった」などの理由から飲み始める人が多いが、購買層が高齢化、先細りになりがちだ。

 しかし、世の健康志向の高まりで、養命酒の効能、自然の恵みであること、歴史の深さなどが見直されてきている。同社も「健康生活に貢献する」を経営の目標に掲げ、消費者への訴求、新製品の開発に力を入れている。草刈正雄さんを起用したTVCM、クロモジ製品の販促などはその例だ。若い人のSNS上のやりとりでも、「エナジードリンク」と比較して養命酒を評価する動きがあり、売り上げはここ23年下げ止まりから増加に転じている。         (取材20217月)

 
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