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シニア創業のすすめ 渡邉恵 e-ビジネススタイル社長

団塊世代を中心に定年退職後に起業に挑戦する人も多い。ただ、創業・起業は容易なことではない。シニアの起業で、注意することは何か。創業支援を手がける、渡邉惠さん(eビジネススタイル社長、三芳町)にお話をうかがった。

再就職は厳しい

―サラリーマンを退職した人の第2の人生として、創業、起業をすすめられますか。

渡邉 退職後、趣味やボランティアに生きるという道もありますが、多くの方は年金だけでは不十分で収入が必要でしょうし、まだまだ元気で働くことで社会と関わることができます。

働く場合、1つは再就職という選択肢があります。しかし、現実問題としてシニアの再就職は非常に厳しいです。面接に行っても履歴書すら開いてもらえないのが実態です。あるとすれば、ガードマンとか清掃とか介護とか肉体労働系の仕事ですが、オフィスワーク系はほとんどありません。その中で、起業は選択肢として十分あり得ると思います。

 

―創業の場合、どのような分野が望ましいのでしょうか。

渡邉 自分で始めるわけですから、一番やりたいことができるわけです。これまでやりたくてもできなかった夢をかなえるというのも起業の一つの意義でしょう。好きなこと、得意なこと、人が喜ぶことの交点にあたる分野を選べばよいわけです。

ただ、どうしてもサラリーマンとして経験、実績を積んできた分野で創業しがちなのですが、あまり決めてかからない方がいいと思います。それだけでは非常に厳しい。我々が活躍してきたのは、バブルの真っ最中で、楽をしてきた世代です。自分の実力と思ってきたものは実は時代の趨勢で、たまたま成果があがったに過ぎないのかもしれません。時代や環境が変わると、その経験自体が通用するのかどうか。逆にお荷物かもしれない。

すると、自分の経験や実績をベースに分野を選ぶのではなく、経験や実績の背後にある能力や技術に立ち戻った方が良いと思います。その上で、今の時代環境に合わせて自分が何をできるか考えてみたらどうでしょうか。

―近年は、起業というとIT(情報技術)関連が多いですが。

渡邉 ITそのものと、ITを利用したネット販売などの2通りあります。ITそのものは、基本的に商売にならないと思います。今は誰でも数万円でパソコンを買え、皆自分でできると思っている。そこからお金は取れません。ITを利用するネット販売は、経験のない人がいきなりやったら商売にならないでしょう。元々通販をやっている方がネット通販もやるなら、そこそこはいけるでしょうが。

もっともITは、電気や水道と同じ、使えて当たり前です。ホームページがある、メールを交換できる、SNSを利用している、タブレット端末が使える・・・などがないと厳しいです。

形から入らない

―起業はハードルが高いですね。

渡邉 ハードルは高いです。私自身、数年前に独立したのですが、うまくいっている状況ではないです。

―会社を作った方がよいですか。

渡邉 形から入らないことです。個人でできることは限られていますので、できればお仲間がいて、お互いサポートし合える関係があった方がよいでしょう。しかし、法人を設立した方がよいかどうかは、どういうお客さんを対象にするかにもよります。企業を対象にするなら、個人では相手にしてくれませんので、会社を作った方がよいです。個人相手なら会社でなくても。会社を作る場合でも、株式会社がよいのか、LLPとか組合、NPOもあるかもしれません。何をやるかで最適な形を選べばよいと思います。

お金も、基本的にできるだけかけないことです。会社を設立する場合は、資本金300万円が1つの目安になります。法律上は1円でできますが、それは非現実的です。資本金は最小限にとどめでください。どうしても、お金があると、あれも必要、これも必要と使ってしましますから。目安の300万円なら、その中でどうしていこうかなとなります。

ものを販売するには場所がいりますが、事務所については、コンサルであれば不要です。最初から拠点がいると考えなくてよいでしょう。自宅で十分です。あるいは机だけの貸しオフィスでも法人登記できます。私の場合も、最初東京・千代田区にオフィスを構えていましたが、今は自宅でやっています。

―どのくらいの準備、助走期間を設けたらよいでしょう。

渡邉 基本的な考え方は、会社を作る前に、助走期間を設け、お客のメドがついたら会社を作るということです。勤めながら土日で別の仕事をする週末起業のような形態で始め、徐々に軸足を移していくような形です。会社の兼職禁止規定の問題はクリアしなければいけませんが。一度始めたら、個人起業では1年目から黒字にしないと息が続かないのではないかと思います。

やめることを前提に

―サポート体制にはどのようなものがありますか。

渡邉 政府、自治体、商工会議所・商工会などで様々な創業支援を行っています。そのうち、産業競争力強化法にもとづく創業支援事業計画の認定を受けた市区町村は窓口でシニア創業のアドバイスを受けることができますし、中小企業庁の創業補助金に応募することもできます。

―シニア起業をしようという人にアドバイスをすると。

渡邉 若い起業家なら思い切って背伸びしなさいという話になりますが、シニアの場合、大きなことを考えるより、自分が楽しめればよいというくらいの感覚でよいと思います。これから、できたことができなくなる年齢に差し掛かります。やめることを前提に始めた方がよいと思います。自分の賞味期限が企業の寿命より短いかもしれない。自分の判断能力が衰えてきたことがわかったら、その時点でやめた方がよいです。仕事である以上、お客様にご迷惑をお掛けするわけにはいきませんから。それに、事業がおかしくなってからでは損失が出てしまいます。

―やはり、リスクはこわいですね。

渡邉 自分で始末のできる範囲でリスクを取るということです。基本的に借金を抱えてまでの起業はやめた方がよいでしょう。シニアは借金すると後始末に困ります。お金を貯めて、自己資金の範囲内でやることです。

活躍する人を応援するという方法も

―渡邉さんは、eビジネススタイルという会社を持たれていますが、何の会社ですか。

渡邉 自社のオンリーワン商品を開発して、今までの下請構造から脱却したいという中小製造業の新商品開発プロジェクトをお手伝いしています。

―あわせて創業支援も手がけている。

渡邉 事業計画書の作成が主ですね。補助金の申請や融資の申し込みには必ず事業計画書がいります。その時に、お手伝いをします。ただ、代筆ではなく、アドバイスをしながら自分で書いていただきますので、コンサルを兼ねています。正直、代筆してしまう方が楽なのですが、社長さんご自身の言葉で事業計画を語れることが大事と考えているためです。

―最近新しい取り組みを。

渡邉 「なんちゃって商品開発秘密基地」(仮)といいうのをやってみようかと。これはシニアということではなく、企業に勤める現役の技術者を対象に、自分あるいは身近な人のためのものづくりをやってみませんかという提案です。DIYではなく、それを試しに売ってみましょうと、マーケティングのようなことをお手伝いします。その場を確保するつもりです。

シニア創業というと、普通は自分が主役になろうとしますが、そうではなく活躍したい人たちを応援するという形態です。

(取材2016年1月)

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