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退職後、経済問題を詳細に深く掘り下げたレポート30作を執筆 歌代雄七さん(鶴ヶ島市)

鶴ヶ島市在住の歌代雄七さんは、企業経営に携わった後、70歳になってから経済レポートの執筆を始めた。今回、7月にまとめた『日本経済は「インドとの連携強化」で、何が』は29作目に当たる。毎回、テーマを詳細に、深く掘り下げ、分量はほぼ新書一冊に相当する。経済のあらゆる分野の調査・解明に取り組み、近く第30号発行、10年の節目に筆を置かれるという。歌代さんにお話をうかがった。

歌代さん

69歳でサラリーマンをリタイア

―歌代さんは元々サリーマンだったのですか。

歌代 三菱油化(現三菱ケミカル)にいまして、子会社に出向しその後、関係会社の社長を6年で退任し、さらにPSPという会社の副社長を経て、2013年に現役を引退しました。  

―なぜ経済レポートを書くことになったのですか。

歌代 リタイアした時69歳で、勤めるのはもういい、何をしようかと頭をめぐらしたのですが、書いてみるのもいいかなと。同時にどこか旅行に出たいと思っていましたので、とりあえず一番遠いアフリカに行ってみようと。元気なうちに条件の悪いところから攻めて、年をとったら先進国に行こうと。どうせなら経済的な部分も見てこようと思い描いて、観光兼経済調査みたいな形で始めました。

―書くことに思いがあったのですね。

歌代 以前社内論文に応募したこともあり、62歳の時、城西大学の修士課程に入り、そこで学んだことをベースに経済のことを書きたいという気持ちはありました。

最初は旅行を兼ねた経済動向調査でアフリカから

―書き始めたのはいつですか。

歌代 最初2014年にアフリカをまとめ、次は別な地域と、2016年まで順に見て回り「世界の経済動向」としてまとめました。最初は年4本のペースでした。

―それぞれ現地を訪れている。

歌代 ほとんど行っています。

―途中からテーマが日本経済に変わったのですね。

歌代 「世界の経済動向」は2016年の第12集で終え、2017年から「日本の経済動向」シリーズにしました。今回発行したのが「日本の経済動向」第17集の『日本経済は「インドとの連携強化」で、何が』です。通算では第29号に当たります。だんだんきつくなってきたので、最近は年2本のペースです。

 

 著作一覧

    タイトル発行年
第18集         ?2024
第17集『日本経済は「インドとの連携強化」で、何が』2023
第16集『日本経済は「テクノロジーが変える」如何に』2023
第15集『日本経済へ「中国動向」は如何に』2022
第14集  『働くが変容、経済への影響は如何に』2022
第13集『経済と脱炭素の相関』2021
第12集『経済が変わる、コロナで』  2021
第11集『 経済と宇宙 』2020
第10集『経済と密接不可分「宗教」の今後』2020
第9集『経済を変える「5G」の行方』 2019
第8集 『経済の元締め「金融」のこれから』2019
第7集『経済の深化と「医療」の進化』2019
第6集『「観光立国」に成り得るか、この日本』 2018
第5集『どうなる「自動車」の将来』 2018
第4集『経済の伴走者「国防」』 2018
第3集『経済の源流「農林・水産業」の動向』2017
 第2集 『経済興隆の要諦は「教育」にあり』2017
日本の経済動向第1集『漠とした「日本経済」なれど』2017
第12集『世界経済の将来』2016
第11集『オセアニア経済の動向』2016
第10集『中南米経済の動向』2016
第 9集『ロシア経済の動向』2016
第 8集『東アジア経済の動向』2015
第 7集『中国経済の動向』2015
第 6集『ASEAN経済の動向』    2015
第 5集『米国経済の動向』2015
第 4集『欧州経済の動向』 2014
第 3集 『インド経済の動向』2014
第 2集『イスラム圏経済の動向』2014
世界の経済動向第 1集『アフリカ経済の動向』 2014

包括的で詳細、8~9万字の分量

―それぞれ分量が大きいです。

歌代 8~9万字くらいです。

―内容があらゆる部分を取り上げ包括的で、かつ非常に詳細です。

歌代 当初、大きなテーマは決めますが、小分けにして小テーマから書き、横へ横へと広げて最後に総体をまとめる方式で、多分他の人とは違うと思います。書く時に定量的表現を基本としていますので、どうしても数字がベースになってきます。読む人にはバラエティに富んでいるとの印象になることでしょう。

―対象を全部理解してやろうという強い意欲を感じます。

歌代 読んでいただく方が立体的にものを見てもらえればありがたいという意識で書いています。

テーマに詳しそうな人の協力を得ることが多い

―手間はどのくらいかかるのですか。

歌代 作業は並行しているので1本につき9カ月とか10カ月でしょうか。日々、ほとんど暇があれば書いているということで、他に予定がなければ6~7時間くらい。昔の受験勉強より長いという感じです。

―調査の方法は。

歌代 自分で書籍や資料を調べる他、たとえば、そのテーマに詳しそうな人の協力を得ることが多いです。長い間サラリーマンをやっていて知り合いも多くいますので、電話をして聞くとか、詳しい人を紹介してもらう、それからこういう本を読めとか、ここに数字が出ているよとアドバイスをもらうとか。

―経費もかかります。

歌代 資料代、旅費の他、お世話になった方と一緒にランチをしたりします。今は社会に還元するという気持ちでやっているということです。

―どのように読者に届けるのですか。

歌代 500人くらいの方に電子書籍的にメールで送っています。知り合いで、顔が見えている人たちです。会社の先輩でパソコンが難しい人にはコピーを郵送しています。

講演依頼も

―10年ほど続けられてきたわけですが、特に印象が深いレポートは何ですか。

歌代 よくできたというのはないですが、「日本の経済動向」第4集の『経済の伴走者「国防」』(2018)は、自分でいろいろなところから情報を集めました。多くの人は経済は経済界内部で回っているのだという意識がありますが、ある方の助言で国防があって初めて経済は回ると気づかされました。国防がしっかりあることで、政治や経済が成り立っている。

―レポートの反響はどうですか。

歌代 出すと、送付先だけでなく、その友達とか知り合いに回してくれます。たとえば第6集『「観光立国」に成り得るか、この日本』は観光業者に回してくれた。すると三重県の観光関係者から講演してくれないかと依頼をいただきました。国防についても講演をしました。

歌代雄七さん講演チラシ
歌代さん講演チラシ

インドのレポートで特に感じたこと

―今回のインドのレポートで特に感じたことは何ですか。

歌代 モディ首相が意外と多面的な部分を持っているなと。レポートでは、グローバルサウス、クアッド、チップ4同盟、ロシア、欧米・日本との関係における、それぞれの立ち位置について書きました。

―そのような多面性は何によるのでしょうか。

歌代 インドが従来から持っている地政学的部分と、インド人の心に由来しているのではないでしょうか。

―インドは今後世界経済のけん引役として期待されていますがどうでしょう。

歌代 今、菅前首相がインドを訪問中です。皆さんが期待しますが、本当にそれに値する国なのかどうか、疑問も持っています。簡単には行かないよ、向こうは一枚も二枚も上手だよと いう基調で書いています。

―経済自体は成長するのではないですか。

歌代 インド経済は成長はしていくと思いますが、飛躍的発展はカーストがなくならない限り難しいのではないでしょうか。国民がそれを許す状況になるのは100年、200年先でしょう。

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傘寿で執筆を終えたい

―次回で執筆を終える予定なのですか。

歌代 来年79歳、数えで傘寿になります。それと、書いていて語彙が浮かばなくなってきました。通算で30号になるので潮時と思います。

―最終号のテーマは。

歌代 タイトルは未定ですが、人間と経済について書きたいと考えています。

―やり終えてどうですか。

歌代 結果的に自分のライフワークだったなと。それから、サラリーマン時代は日々追われているような感じでやってきたが、自分を振り返る時間だった気がします。ありがたいことに人脈があったことで書けた面もありました。

―介護が大変だったとお聞きしましたが。

歌代 4年前まで家内の母親と自分の母親と同居、その後施設に移り、私の母は去年99歳で亡くなりましたが、義母は101歳で健在です。有難いことに、二人とも施設に入るまで自分で食べられていました。

地域活動は継続

―経済動向レポートの執筆が終わったら何をされるつもりですか。

歌代 今地域で毎週、高齢者向けの体操教室が始まる前10分間、「一口健康メモ」と題してお話をしています。また今年3月「地域デビューきっかけ広場」というイベントの実行委員長をしました。10月には市全体規模で開きます。定年になった人が家にとじこもらないよう外に出そうという意図で、クラブとか同好会と結びつける催しです。自分の持っているものを地元に還元していきたい。

歌代さんの参加した地域イベント

                   (取材2023年7月)

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