観光客でにぎわう川越の蔵造りの街一番街沿い、時の鐘の近く、店先に土産物や雑貨などを積み上げた、一見何かわからない店がある。よく見ると「本屋」の小さな看板。中に入ると、確かに書店。しかも、他では見られない川越地域に関連した本がずらりと並びびっくりする。昭和10年から営業する、市内で最も歴史のある書店の一つ、「本の店太陽堂」について、店主の平岩嘉昭さんにうかがった。


創業は昭和10年
―創業はいつですか。
平岩 昭和10年です。おやじが開き、それから私が引き継いでやっています。
―建物は蔵造りですね。
平岩 明治26年の建築のようです。
―昭和10年からずっと本屋なのですか。
平岩 そうです。新刊本ですね。その後、戦時など本が入らない時には貸本もやっていました。


―川越では古くからある書店です。。
平岩 川越で古いのは福田屋さん、吉田謙受堂さん、そしてうちです。今町の本屋がだいぶなくなっている。
―ここまで続けられたのは。
平岩 大変です。ただ、うちは雑貨も扱っていますし。本だけではやっていけない。利益率が小さい。
地域の自費出版本を並べる


―地域関係の本の品揃えが豊富です。
平岩 地域の自費出版ものが多い。自分で研究して本を作って、置くところがないというので、そういう方々のがだいぶあります。
―どう集めるのですか。
平岩 持って来られる方もいますし、新聞などで紹介されたものを本人に電話してというのもあります。でも限定だからある程度出るとそれで終わりになっちゃうものが多い。出版社なら売れたものは重版をかけることもあるが、自費出版では大変です。


―おすすめは
平岩 そうですね。『川越今昔物語』など川越のことがよくわかります。どれも他には置いていない。ここに来ないと買えないものばかりです。
―「小江戸ものがたり」も。
平岩 「小江戸ものがたり」も全部そろっています。
―書いた人にとっては置いてもらえるのはありがたい。
平岩 そうですね。自分の本がみなさんに見てもらう場所としてはあってもいいかなという感じがします。
―観光客はどうですか。
平岩 あまり関係ないですね。もうちょっと入ってもらいたいですが。
―平岩さんはおいくつですか。
平岩 77歳です。大学を出てすぐ店に入りました。

(取材2025年3月)