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日本最大級の道教のお宮 聖天宮(坂戸市) 台湾人・康大法師が神のお告げで建設

坂戸市の田園風景の中に突如現れる極彩色の道教のお宮「聖天宮」。日本でも最大級のこの豪華な建築は、台湾人の康國典大法師が神のお告げを受けて、全く縁のなかった異国の地に建設した。康國典大法師の子息で、お宮を管理する康嘉文さんに、お宮の由来などについてお聞きした。

お告げで林と畑の中に一から建てる

―創設者の康國典大法師は道教における坊さん(道士)ですか。

 そうではありません。法師です。台湾では道教のお宮にお参りに行く風習があります。貿易商をしていて、中国との貿易で財をなしました。

―法師とは。

 日本でなら僧侶より神主に近いです

―大法師のご出身は台湾のどこですか。

 台北の郊外の板橋(バンチャオ)というところです。

―このようなお宮を建てるきっかけは。

 膵臓関係の大病をして神様に助けていただいて、神様に対する感謝と、他の人も参拝のできる神社を建てようと思いました。最初、台湾で建てようとしたら、お告げでここ(日本の坂戸)にしなさいと言われたのです。縁もゆかりもなく、中華街があるわけでもないのですが、一から整備してこのお宮さんを建てたのです。

―お告げというのは。

 詳しい内容は私も聞いていませんが、方角とか聖天宮の形も全部お告げがあったようです。

―建てる前、ここ(坂戸市塚越)はどんな場所だったのでしょうか。

 ここは雑木林と桑畑で、建て始めた時は、若葉の駅もなく、前の道路もなく、農道だけでした。

―大変だったでしょうね。

 敷地は大体7千坪ありますが、個人で、しかも外国人が、これだけの土地をまとめるだけでも考えられないですね。大変な苦労はされたと思います。いろいろな地主さんを説得して買っていかなければいけない。いきなり来て、土地を買いたいと言われても、普通はまとまらないでしょう。しかも宗教施設ですから、とまどう人はいたかも知れないですね。

中庭と本殿

中庭と本殿

15年以上かけ平成7年完成

―建設はいつから。

 昭和50年代です。出来上がったのは平成7年です。15年以上かかっています。

―建物の様式は。

 形は全部お告げがあったわけです。台湾の神社の様式はありますので、宮大工に任せた部分もあったと思いますが。

本殿入り口

本殿入り口

 

前殿屋根の装飾

前殿屋根の装飾

―方角はどちらを向いていますか。

 真南でなく東南です。お告げでこの方角も出たのですが、真南であると、全然日の当たらない北側ができますが、東南なら裏側にも日が当たります。

―道教のお宮としては大きい。

 台湾では小さいお宮さんが多く、こういう大きいお宮さんは少ないです。これは大きい方です。

―資金はいくらくらい。

 正式な数字は難しいですが、結構な金額です。

―個人ですべて負担されたのですか。

 始めたのは父ですが、それに協賛してお金を出し合った人がいます。台湾の人も日本の方もいらっしゃいます。

―大工さんは。

 台湾から呼びました。本場の人でないと色とか形が全然違いますから。中でも一流の宮大工を呼んで作りました。台湾の宮大工はそれぞれ分野が特殊であって、石は石だけ、木は木だけ、金箔は金箔師だけと、全部役割分担されている。それぞれで一流の大工を探して、しかも日本に連れてこなければいけない。父の人徳がなければできないでしょう。これだけのものを15年で仕上げたのは奇跡に近いかもしれません。同じものを今作れと言われてもできないと思います。まず材料が揃わないでしょう。作りも非常に凝っています。

当初から一般に公開

―現在はお宮として一般の人も参拝できるわけですか。

 ここは下町がありませんが、当初から一般に公開しています。信仰でいらっしゃる方の他、観光で来られる方も多いです。

ここを建てたのは、自分も神さまに助けていただいたので、他の人もご利益にあやかれるようにということからです。ただ宣教、布教を目的にしているわけではありません。神さまに救いを求める人がいれば、ご自由にどうぞ。道教の精神も元々そういう精神です。

―入場はいつでもできる。

 そうです。

―反応はどうですか

 結構、いろいろな人が来て、初めて来ても、癒されるという方が多いです。これからも、もう少し地域に根づいて、憩いの場として一般の人が多く来てくれるように活動していきたいと考えています。

―毎週土曜に門前の広場で太極拳が開かれている。

 聖天宮が直接運営しているものではありません。ここの雰囲気とかロケーションがいいので、中国・台湾の公園をイメージしてぜひここでされたいということで、協力しています。教室ではないので、どなたでも自由に参加できます。土曜日の朝です。

国内最大の道教寺院

―日本では道教はあまりなじみがないです。

 道教は元々信者であるとか信者でないとか区別はしていません。一つの生き方とも言えますし、台湾では風習の一部です。台湾で、「あなたは道教の信者ですか」と聞いたら不思議がられると思います。

―こういう施設は日本に他にありますか。

 横浜中華街の他、各地に孔子廟、神戸の南京町に関帝廟があります。敷地から建物まで、国内ではここが一番大きいと思います。道教はそのままの形で日本に入ってきたのはわずかで、風水、陰陽道、易などの形で断片的に入ってきています。

―孔子廟は道教の施設ですか。

 厳密には難しいですが、孔子も中国人ですから大本の思想は共通です。作りも似ています。道教は中国の歴史と同じくらい古い宗教で、それを哲学としてまとめたのが老子や孔子です。日本の神道と同じように民間信仰から始まっています。

本尊は「三清道祖」

―本尊は。

康 「三清道祖」と言います。よく「道祖神」と間違われますが、道祖はすべての始まりの意味です。道教でも一番位の高い神さまです。真ん中の「元始天尊」は天と地を作った神様で、「道徳天尊」は道徳の神様、「霊寶天尊」は魂を授ける神様です。日本の神社と違い、ご神体がはっきりしています。彫刻像になっていて、男の神様は皆ひげが長いです。

本殿内、正面に本尊

本殿内、正面に本尊

―実在の人物ではない。

 伝説ですね。いろいろな説があり、老子が道徳天尊になったという説もあり、逆に道徳天尊が降臨して老子になって道徳を広めたという説もあります。

お願いごとはこと細やかにした方がよい

―参拝はお願いごとをするのですか。

 そうです。日々のお願いごとをします。お願いごとはこと細やかにした方がよいです。まず自己紹介をし、「商売繁盛」、「家内安全」だけでなく、「家内安全」なら、今の家族の状況、お孫さんのことなら学校の名前、苦手な勉強まで、日々の暮らしの報告をしながら、お願いをします。

―線香を使うのですか。

 長いお線香を持ってお願いをします。台湾では、お線香は供養でなく祈願のお線香です。自分の気持ちが煙となって天に伝わりますので、線香は火をつけて持ったままお願いをします。

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前殿と本殿の2ヶ所の天井

―天井の説明をしていただけますか。

前殿天井

前殿天井

本殿天井

本殿天井

 楠の彫刻を釘なしで組んで金箔を施しています。このように彫り物で埋め尽くす天井は珍しいです。前殿と本殿の2ヶ所あり、前殿は万物を表す天井で、1万以上の部品を使って組んでいて、細かい。よく見ると、非常に魅力的です。真ん中のドーム状のところは八画形になっており、「八卦」は易にも使われています。八卦の組み合わせで万物ができたというのが中国の伝説です。八卦の下でおみくじをするとよく当たる。八卦の下でおみくじをするのが正式なわけです。よく「当たるも八卦当たらぬも八卦」と言います。

 本殿の天井はらせん状に組んでいる。このような形は珍しいです。技術的にも作るのは非常に難しいです。これは大極を表した天井です。すべての始まり、宇宙の始まりということです。その下に神様が鎮座していますので、神様の世界からすべてが始まりましたということを表すのが本殿全体の構図なんです。

門神

―この像は。

 山門神と言います。ここはお宮さんの正門になり、門番として彫ってあるものです。門を閉めると外側に向きます。

―これは彫刻ですか。

 楠の彫刻です。台湾で彫ってから持ってきたものです。

―大きさは。

康 高さ4・5㍍、1枚板です。これだけの大きさですから1千年以上の木でしょう。しかも何年も乾かさないとすぐには彫れません。普通は寄木になりますが、これは羽衣や弓の弦、花、爪まで掘り出したものです。

―いくつありますか。

 全部で10体あります。ぞれぞれ違った神様です。

おみくじ

―おみくじは日本と違いますね。

 日本の神社と同じように台湾にもおみくじがありますが、台湾ではただ番号を引くだけでなく、それが自分に合っているかどうかを神様にうかがわなければいけないんです。片側が陽で片側が陰の「神杯」を投げて陽と陰の両方が出なければ番号の許可は下りない。ものごとには始まりと終わりがなければいけないという考えから来ています。許可が出ないと引き直します。すんなりと出る人もいますが、気持ちに迷いがあったりするとなかなか出ないとされています。

 参拝の仕方も、おみくじも違います。聖天宮に来られて、台湾の参拝体験をしてみてください。        
(取材2014年) 

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