ラドン温泉は、ラドンガスを溶け込ませたお湯に浸かり、また空中に放出されるガスを吸い込むことで健康になるという、ホルミシス効果を狙ったお風呂。ラドン温泉のある銭湯は、以前は各地にあったが、今は少なくなった。埼玉県ふじみ野市にある末広湯は、ラドン湯を守り続け、遠来の常連客も多い。地域の人たちの交流の場として、「銭湯カフェ」も開いている。末広湯2代目の佐原直司さんにお話をうかがった。
―この銭湯はいつから。
佐原 私の生まれた1年前です。私は今52歳なので昭和36年に。元々銭湯だったところを父(武司氏)が譲り受けた。2年後に一度建て替えています。当時は、周りは野原だったそうです。
―ラドン風呂を入れたのは。
佐原 昭和59年です。大阪の業者が、番台をなくした新しいお風呂を手がけていまして、その提案を受けて、うちもカウンター方式にし、ラドンも導入したわけです。今、ラドン湯の温浴室とラドンのサウナ、他に回転風呂、赤外線風呂があります。
ラジウム温泉の岩盤浴の原理
―ラドン風呂はどのような装置なのですか。
佐原 機械でラドンガスを発生させて、ガスがお湯の中に含まれることになります。そのお湯に入っていただくのが温浴室。サウナもラドンガスが出ています。
―ラドン風呂は、どう健康によいのですか。
佐原 理屈自体はまだ解明されていないようですが、各地のラジウム温泉の岩盤浴でマイナスイオンが発生し、体が心地よくなることがわかったのが始まりです。それと同じように人工的にラドンを発生させることができるということで、開発されました。
お客さんには、腰痛など痛みが消えたという方もいますし、体調が悪かったのがラドンに入るようになって治ったという方もいらっしゃいます。ただ、「何々に効く」という言い方はできませんが。
ガスを吸い込み効果
―具体例では。
佐原 女性の方で、病気で非常に顔色も悪かったのですが、うちのサウナに通っていたら、みるみる肌つやがよくなり、どす黒かった顔色がきれいなピンク色になったのでびっくりしました。
―ラドン風呂の入り方は。
佐原 温浴室はガラス張りですので、お湯に浸からなくても、ガスを吸い込み効果があります。サウナもそうですが、長く座っているだけでもよいと思います。
―遠くからの客さんもいるのではないですか。
佐原 車で来られる方は川越、富士見市、さいたま市などからも。常連さんは、ほとんどラドン目当てです。
―ラドン風呂の銭湯は他にもあるのですか。
佐原 今は、埼玉県でうちと富士見市の「健康湯ランド」さんと2軒くらいでしょうか。
お風呂が休みの土曜日にイベント
―直司さんはずっとここで働いているのですか。
佐原 私は17年間サラリーマンしていまして、その後少し間が空いて5年ほど前に入りました。カフェは3年前からです。
―今の時代、銭湯経営は厳しいと思いますが、跡を継ごうと考えたのはどうしてですか。
佐原 本当はカフェをやりたかったんです。以前から自宅でイベントやパーティのような催しを開いていまして、住まいは都内なので都内で物件を探していたんですが、それならうちでやったらどうかということになりました。
―カウンター前のスペースがカフェになるわけですか。
佐原 厳密には休憩所ですが、そこで飲食していただきます。脱衣場で飲食をしてはまずいので、普段は仕切っていますが、お風呂が休みの土曜日は、壁を取り払ってイベントを行っています。
―イベントはどのような。
佐原 今は色鉛筆サロンとか読書会とかお勉強系が主ですが、最初の頃はジャズやお琴、お芝居も開きました。近々、またライブを行います。
―銭湯カフェは珍しいのではないですか。
佐原 廃業してカフェにした銭湯カフェはいっぱいあります。ただ、営業しながらのカフェはたぶんうちだけでしょう。
―カフェを開いてどうですか。
佐原 スーパー銭湯でも飲食できますが、店の人間とや、お客さん同士のコミュニケーションがとれないところがあります。うちの場合、たとえば色鉛筆サロンなど、20代から70代まで、和気合い合いとおしゃべりしながら、いろいろな世代の方が交流できる場になっています。一人暮らしの方とか育児中のお母さんとかが集まってくれる公民館のような位置づけにできればいいと思っています。そういう場がこれからは必要かなと。
―カフェの料金は。
佐原 習うのに1回1000円、プラスワンオーダー制です。ほとんどボランティアですね。
―銭湯の料金は。
佐原 今年10月から410円が430円に値上げになりました。銭湯の料金は物価統制令の対象で、県が指定、統一されています。
(取材2014年)
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