アイロンのような形をした温熱器を体に当てる治療法、温熱療法。自律神経を調整し、免疫力を上げ、がんでも初期なら改善効果がみられるという。故三井と女子女史が考案、実践し、三井温熱療法とも呼ばれ、今も多くの療法師が活動している。NPO法人日本温熱療法協会の江副哲子理事長(施療院健寿院長、認定校東京健寿館館長)に、三井と女子女史の思い出、NPOの歩みなどについてお話をうかがった。
甲州弁丸出しの素朴な三井と女子先生
―江副さんが温熱の道に入ったのはいつからですか。
江副 入ったのは20年ちょっと前です。それまでまったく別の仕事をしていましたが、こんな療法もあるよと、紹介されて三井先生のところに行ったんです。見習いのような形で、通いました。習い始めの頃、父がガンで亡くなり実家に帰ったら温熱器があるんです。三井先生のところに行っていたと聞いて、何かの縁と思い、私もガン体質なので習っておけば役にたつかなと。
―三井先生はどこにいたのですか。
江副 成田で丼(せい)龍堂という治療院を開いていました。三井の「井」をとったのですが、4角でよくないというので中に点を入れたそうです。
―三井先生は、どんな方でしたか。
江副 山梨弁丸出しの素朴な感じの方でした。私はそれがすごく気に入って。元々女学校の先生だったのですが、定年で、退官なさって、興味があって治療の方に行かれた。あんまから、テルミーという温熱療法を始めたのですが、煙が出るのでおもわしくなく、自分で考案し、電気で発熱するアイロンのような形のもので施療を始めたのです。初めは何事かと言われたのですが、結果がかなりよかったんですって。それから先生は、なぜだろうと、いろいろなことを自分で研究し、人間の体は熱で動くという結論に達した。それで、今の三井温熱療法を開発された。改装され改装されて今の温熱器になったのです。
全国からガン患者が押し寄せる
―その後有名になり、治療を求める人が押しかけるようになるわけですね。
江副 そのうちに帯津良一先生(帯津三敬病院名誉院長)と出会い、帯津先生が療法の百科事典を書いた時に三井先生を取り上げてくれた。それから先生が推薦されるようになり、講演会に出たりして、どんどん温熱療法が広がっていきました。
―どういう人が先生のところに。
江副 ガンの人とかが、全国から泊りがけで先生のところに来ていらっしゃいました。重い方が多かったです。びっくりしました。
―当時 三井先生はおいくつくらい。
江副 70歳少し過ぎでしょうか。私は女性が60になっても、自分の気持ちがあればこれだけ仕事ができるということが感動でした。女性ってすごいなと。
施療院と養成学校を同時に始める
―江副さんはその後独立されるわけですね。
江副 そのうちに、ある方が温熱療法の学校をやるというので、そこで勉強し、千葉市都賀というところで治療院と治療師の養成所を開きました。以後、ずっと都賀にいます。
―治療と同時に治療師の養成を始めたのですか。
江副 まずはこの療法を知ってもらわなければならないと考え、本当に一人から教えることをやり始めました。一人の人が温熱を知ってくれればそこからたくさんの人に伝わります。私一人でやっていたらたかが知れていますよね。一人一人育てることで、大勢の人に三井温熱を知っていただいて、みんなが健康になってくれればいいかなと。養成所は今も認定校東京健寿館として続いています。
―三井温熱にそれだけ自信があったわけですね。
江副 はい。これを広めなければと思いました。いろいろな方が、免疫力が上がり、ともかく元気で先生のところから出ていかれる顔を見て、私はこれはと確信しました。
体温を上げて自律神経のバランスをとる
―温熱療法はどういう風に体に働きかけるのでしょうか。
江副 先生が言うのには、人間の体は低体温になることで免疫が落ちていく。それが基本です。自律神経には、交感神経と副交感神経がありますが、体温が36度以上で、自律神経のバランスがとれれば、人間は元気で、病気からの回復力も原則としてあるはずだという理論です。だから体を温めて自律神経をしっかりさせて、脳からの指令をうまく体に伝えていくことが重要なのです。
―温める方法はいろいろありますが。
江副 体温があっても、流れが悪いと体の部分はすごく冷えています。それを、ほどいてあげることで、体の流れをよくします。それと一つは刺激療法なんです。人間は、切ると、痛い、治そうという力が脳から出て、傷をふさごうとする、それが免疫力です。熱い、痛いはいやなので、治そうという力を刺激によって蘇られせてあげる。それと熱が出る。熱は味方なんです。治そうと思って熱を出す。
病気のある部分は熱く感じる
―病気があるとその部分が熱いと感じる。
江副 そこは細胞レベルで温度が下がっていますから。普通60兆の細胞が37度を保っていれば健康ですが、そうはいかない。問題があると、部分的に下がってくる。33~34度くらいになる。
―施療で治療器を当てるとどこが悪いかわかるのですか。
江副 どこが悪いかはわかります。どんな病気かまではっきりはわかりませんが、想像します。それは知識です。
―治療の時間、頻度はどのくらいがよいのですか。
江副 1回1時間程度。人、病気によりますが、とりあえず、初めは間を置かないで来てくださいと申し上げています。3、4回は続けてきていただき、集中して、そこまで免疫力や体力を上げてあげる。それから先はご本人が感じてくれると思います。
―治療器の遠赤外線セラミックスの効果もあるのでしょうか。
江副 それも確かに、あるでしょう。ただ、三井先生は最初は鉄板のような装置を使っていましたが、効果は出ていました。やけどの心配があったので、現在のよう装置になりました。
病気が進行しないことには自信
―江副先生の施療でよくなった例を教えていただけますか。
江副 いろいろな例がありますが、腎不全で、肌が黒く、透析をしなければならないギリギリの人が、やっていくうちに、透析しなくてもよくなりました。自律神経失調症の方も、自分を解放することで改善に向かいました。ガンの初期は大丈夫です。膠原病とかレッテルを貼られた病気も、進まないです。今の維持かよくなるか。進行しないのには自信があります。
―三井温熱に関しては、他の団体もあり、一般の人にわかりにくいですね。
江副 元々三井先生が起こした会社や団体もありますが、療法の考え方が違ってきました。私は、三井先生の意思を継いで、体を治す基本的なところから出発しようと、NPO法人を立ち上げました。
―今後の目標は。
江副 広く皆さんに知っていただきたいですが、まだまだです。理想は各県に、温熱をなさる人が何人もいれば、そこで受けられます。各県の施療院でネットワークを作っていければと思います。
日本温熱療法協会ホームぺージ https://mitsuionnetsu.jimdo.com/
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