川越の喜多院の門前にある川越歴史博物館。一見、どのようなタイプの博物館なのかわからないが、一歩中に入ると驚かされる。戦国時代の甲冑、川越城主の使った品々、多種多様な十手。どれも他に見られない充実した展示だ。館長の西山浩市さんにご案内いただいた。
昭和63年にオープン
―この博物館はいつオープンしたのですか。
西山 昭和63年の元旦です。
―どのようなものを展示しているのですか。
西山 縄文初期から明治まであります。現在は、「明治150年」ということで、幕末から明治にかけてのものを中心にしています。
―川越関係が多いのですか。
西山 川越だけではありません。
―展示の特徴は。
西山 時代としては、戦国時代をメインにしています。3階はほとんど戦国期の甲冑です。あとは川越藩関係。川越藩では松平伊豆守信綱が甲賀忍者を使っていました。手裏剣とかその関係の遺物は、うちにしか残っていません。
十手をこれだけ揃えているところはない
―収蔵品は何点くらいあるのですか。
西山 わかりません。たとえば矢じりだけでも1つ1つ数えたら結構な数になります。甲冑については、室町末期から桃山まで約25年間のものを置いていますが、3、5年で形が変わります。うちならその微妙な変化がわかります。
十手
関八州代官の十手
西山 十手をこれだけ揃えているところはないと思います。時期によって形が変わってきます。また、身分のある人は、権力の象徴として、大きい十手を持ちます。
江戸から大正にかけての灯り
弥生式土器と埴輪
平安末期、河越太郎重頼が日枝神社に奉納した太刀
川越城主松平大和守の采配
甲冑
武田信玄の騎馬軍が使用した具足
西山 戦国時代、室町末期から桃山にかけての実戦で使用した甲冑です。戦国時代のものは少なく、他にはないでしょう。
日本の文化、技術をわかってほしい
―展示品は館長が収集されたのですか。
西山 うちの父(西山忠夫氏)と私です。あとは何人かの知り合いに話をして、催しの際は借りたりすることもあります。
―お父さんは、資産家だったのですか。
西山 大井町(現ふじみ野市)で食肉卸業をしていました。好きが昂じてこうなりました。
―私費で集め、運営しているということですか。
西山 そうです。博物館でもうけようなんて絶対無理です。私は好きでやっている。本物にこだわっている。問題は日本の文化、職人の技術を一人でも二人でもわかってくれればOKなんです。日本は礼儀作法で生まれた国です。自然と共に生きてきた。今は、完全に頭の中は西洋です。カネがあればいい。根本はそこにあります。
―お客さんはどのような方が多いですか。
西山 古いものが好きな人。勉強に来る人が多い。最近、若い人が来るようになりました。日本はどういう国かやっと見直しし始めましたね。
―お客さんの反応は。
西山 入り口が狭いのに、中に入るととんでもないものが置いてあるからたまげる方が多いようです。
公立博物館では予算がなく買えない
―これだけの収蔵品があると公立の博物館などから譲ってほしいと言われませんか。
西山 予算がないから買えないと思います。
―館長はおいくつですか。
西山 62歳。うちは元旦から開き、年中無休です。私の体がいつまでもつかわかりませんが、一人でもお客さんが来てくれれば話ができます。日本の文化を伝えていきたい。
(取材2018年10月)
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