2020年国勢調査の結果、滑川町の人口は5年間で8.1%増加、増加率は埼玉県で1位、全国でも12位だった。多くの自治体が人口減少に見舞われる中、同町は2000年以降、一貫して高い増加率を維持している。その背景として、東上線つきのわ駅周辺の広大な地域の区画整理・宅地造成という住宅インフラ整備とともに、子育て支援という政策要因も大きく寄与している。
(以下の記事は、滑川町総務政策課の小柳博司課長のお話、「滑川まち・ひと・しごと創成総合戦略」など同町公表資料、町・県・総務省統計、ホームページ記事などを参考に作成しました)
滑川町人口の推移 | |||||||||
1980 | 1985 | 1990 | 1995 | 2000 | 2005 | 2010 | 2015 | 2020 | |
人 | 9,295 | 10,406 | 11,566 | 12,484 | 12,836 | 15,434 | 17,323 | 18,212 | 19,682 |
伸び (%) |
16.4 | 12.0 | 11.1 | 7.9 | 2.8 | 20.2 | 12.2 | 5.1 | 8.1 |
国勢調査 |
つきのわ駅が平成14年(2002)に開業
国勢調査によると滑川町の2020年の人口は19,682人で2015年比8.1%増加した。増加率が同町より高かったのは関東では流山市(14.7%)、印西市(10.8%)だけである。
滑川町の人口は1990年代に入り増加が鈍化していたが、2000年代入り以降再加速した。2005年には2000年比20.2%増と増加率は県内トップ、全国でも3位、その後もコンスタントに増加を続けている。
滑川町の人口増加の起点になったのは、東上線つきのわ駅周辺の宅地開発だ。つきのわ駅は平成14年(2002)に開業、それに合わせて周辺の区画整理事業による住宅販売が開始された。駅周辺には東武鉄道が広大な土地を所有し、面積90ha以上、計画人口7,500人という大規模な開発だ。
つきのわ駅
区画整理記念碑
駅周辺の住宅
つきのわ駅周辺開発に伴い、町への転入人口は大きく増加、2000年代後半からも高水準を維持し、人口の社会増は続いている。つきのわの区画整理は平成22年(2010)に事業が竣工したが、その後数年は販売は続行し、また森林公園駅からつきのわ駅にかけて民間の不動産会社による分譲住宅開発(羽尾など)が行われている。
合計特殊出生率埼玉県1位
このように滑川町の人口増は当初は住宅開発による社会増が主導したが、2004年以降は出生数が急激に増加している。合計特殊出生率(一人の女性が一生に子供を何人生むかの数)は、滑川町は平成14年(2002)は1.17と県内でも41位の低位だった。それが平成15年は1.46(4位)、16年は1.74(1位)と急上昇。以降、令和元年(2019)に至るまでほとんどの年で県内1位をキープしている。
合計特殊出生率 | ||
滑川 | 埼玉県 | |
2002 | 1.17 | 1.23 |
2003 | 1.46 | 1.21 |
2004 | 1.74 | 1.2 |
2005 | 1.82 | 1.22 |
2006 | 1.76 | 1.24 |
2007 | 1.47 | 1.26 |
2008 | 1.55 | 1.28 |
2009 | 1.7 | 1.28 |
2010 | 1.36 | 1.32 |
2011 | 1.75 | 1.28 |
2012 | 1.49 | 1.29 |
2013 | 1.52 | 1.33 |
2014 | 1.37 | 1.31 |
2015 | 1.82 | 1.39 |
2016 | 1.7 | 1.37 |
2017 | 1.69 | 1.36 |
2018 | 1.68 | 1.34 |
2019 | 1.54 | 1.27 |
出生率上昇、出生数の増加は、一つは住宅開発により出産世代が多く流入したことによるが、それだけではない。
給食費(保幼小中)の無償化、18歳までの医療費の無償化
滑川町によると、平成23年(2011)に、「子育てナンバーワン」を町の最重点政策に掲げ、給食費(保幼小中)の無償化、18歳までの医療費の無償化の政策を導入した。同政策は県内では一番、全国的にも先駆け。給食費だけでも子供1人年間6万円ほどの補助になり、「転入の増加、人口の滞留、出産の増加に大きな効果を発揮している」という。子供人口増加に応じて、小中学校校舎の建設、増築などハード面の施策も次々と打ち出している。
滑川町役場
近隣自治体でも小川町、ときがわ町などは、昨今都会からの移住者の人気が高いが、人口はむしろ減少している。その中で滑川の人口増は際立っている。新しい住宅地に転入してくる若い世代は、東松山など近隣市町からが多い。多くが東京に通勤するサラリーマン世帯だ。住宅は駅に近く、つきのわ駅から池袋まで1時間弱で行ける。隣の森林公園からは始発が多くあり、乗り換えれば座って通勤できる。つきのわ駅周辺住宅地は、何もない森林地帯が開発され、住宅地面積も平均200㎡(当初分譲時)前後と広い。
広い住宅と交通の便。このような恵まれた住環境と、厚い子育て支援政策が、滑川町の人口増を支えているということだろうか。
(取材2021年8月)
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