秩父の皆野町の山中、奥長瀞渓谷沿いにある秩父温泉・満願の湯。埼玉県でも最も古い日帰り温泉施設だ。観音霊験記錦絵に描かれた近くの秩父札所34番(日本百観音結願寺)水潜寺の平安時代天長年間の逸話を手掛かりに、先代社長が夢を見て掘り当てたという不思議な由来を持つ。支配人の黒沢秀敏さんにお話をうかがった。
埼玉の日帰り温泉第1号
―この温泉はいつオープンしたのですか。
黒沢 平成9年、21年前になります。
―かなり早いですね。
黒沢 埼玉で日帰り温泉の営業許可をとった第1号だと思います。
―掘ったのですか。
黒沢 ボーリングして掘り当てたのです。
―どなたが。
黒沢 先代の小笹孝壽という方(故人)です。
創業者の小笹氏
天長元年の大干ばつの際水が吹き上げた
―ここから温泉が出るだろうとどうしてわかったのですか。
黒沢 こちらのお風呂の由来から言いますと、その方がここに脈があるだろうという夢をみたそうです。温泉から日野沢川沿いに少し上がったところに秩父札所34番の水潜寺という寺があります。西国33ヵ所、坂東33ヶ所、秩父34ヵ所ときまして、日本百観音の最後の結願寺と呼ばれます。その水潜寺を含む秩父札所に関わる34枚の観音霊験記錦絵を、骨董収集家であった小笹氏が所有していました。その絵に、天長元年(824)東国が大干ばつに見舞われた際、一人の法師が杖でこの付近の岩を突くと水が吹き上げた様が描かれています。
水潜寺
その絵があり、自らも夢を見たので、当時町議だった小笹氏は有志に呼びかけ、600~700メートルほど掘った。最初は出ず、水潜寺にこもり願掛けを行ったところ、108日目に湯が出たそうです。平成元年のことです。必ず願いが満つる、満願成就ということで名を「満願」にしたのです。
浅間山と富士山を結ぶ地層帯
―どのようなお湯なのですか。
黒沢 浅間山と富士山を結ぶ地層帯から湧く、アルカリ性の温泉です。
―掘ってすぐには入浴施設にはしなかったのですか。
黒沢 最初は浴用・飲用で販売しました。今も少し先に源泉所という場所があり、そこで源泉を販売しています。元々日帰り温泉の計画があり、平成9年に開業に至ります。
源泉所
まろやかで冷え性に効く
―温泉の特徴は。
黒沢 肌感覚がまろやかで保湿効果がある。関節炎、冷え性などに効能があり、慢性皮膚病には非常に優しい温泉です。
―お客さんの反響は。
黒沢 女性の場合特に冷え性の方は体が温まるという声が多いです。あとは皮膚病です。
―飲用の場合は。
黒沢 血糖値が抑えられるとか、痛風に効いたというお客さんもいます。
―湯舟は。
黒沢 男女それぞれ、内風呂1つ、露天風呂1つずつです。
―露天風呂からの景色が抜群ですね。
黒沢 眼下を日野沢川が流れ、奥長瀞渓谷になります。
露天風呂(満願の湯HPより)
源泉も販売
―料理の目玉は。
黒沢 黄金めし(1100円)。1キビ、ヒエ、栗、黄色い穀物の入った御膳。旬の天ぷらがつきます。
―水も販売する。
黒沢 ミネラルウォーター(販売サン・グリーン)500ML160円 2Lは270円。源泉は20L100円です。
―会社(秩父温泉株式会社)の山口浩人社長はどういう方ですか。
黒沢 守屋八潮建設の社長を兼ねており、同社とはグループ会社になります。
―最近は近隣にも温浴施設が増えていますが。
黒沢 競争はいたし方ありませんが、運営のスタイルはそれぞれその特徴があります。うちは泉質はもちろんですが、自然豊かな場所にあり、奥長瀞という知名度もありますので、そういう特徴を訴えていきたいと思います。
(取材2018年4月)
満願の湯ホームページ http://www.chichibuonsen.co.jp/
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