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手話通訳、民生委員、老人会 多様な地域活動に取り組む 神作トモ子さん(富士見市)

富士見市の神作(かみさく)トモ子さんは、地域でボランティア活動を実践しながら、民生委員、老人会副会長など様々な役割も務める。活動ぶりをうかがった。

手話の通訳者

―神作さんは手話通訳をされているのですか。

神作 聞こえない人(聾唖者)の権利を守るには、きちんと資格を持った人が担わなければいけないということで、平成16年に、富士見市に社会福祉協議会に委託する方式で手話通訳派遣制度ができました。私は、試験を受け登録通訳者になりました。

―手話をどのように勉強したのですか。

神作 私は元々視覚障害者のガイドヘルパーをやっていたのですが、並行して手話を勉強しました。当時は、養成講座がなくて、地元の聾唖者と一緒に行動しながら教えてもらったり、県の講習会に参加し学びました。

―通訳者はどのくらいいるのですか。

神作 派遣事業は今、富士見市と三芳町の広域派遣事業となっており、通訳者は合計11名です。

医療現場が多い

―活動は、どういう場面が多いですか。

神作 一番多いのは医療です。

―付き添いですか。

神作 通訳者として現場に行きます。聾唖者は、何日にどのような内容の通訳が必要かを、派遣事務所(社協)にfaxやメールを送ります。誰が担当するかを事務所で決めて、依頼がこちらに来ます。病院で会い待合室などでその方の状態を聞き、一緒に受診科に行く。先生には家族ではなく通訳者という立場であることを利用者から伝えてもらいます。近頃では通訳ということを理解してくれることが多くなり、親切に対応してもらえます。

―医学用語の通訳は大変そうですね。

神作 たとえば胃炎なら、私たちは言語で生きているのでなんとなく情報としてムカムカ、焼ける感じなどと思いますが、利用者は微妙な言葉を聞いたことがないので、医師からの助言を得ながら正しい情報を伝えるよう努力しています。

―他では、どのような場面があるのですか。

神作 講演会。公的な事業は本来どの講演も手話通訳をつけるべきです。あとは、教育関係や育児などです。

―教育関係とは。

神作 学校の懇談会とか学級会とか、卒業式、入学式などです。

―難しさはやはり専門用語でしょうか。

神作 私たちは浅く広く知識を持てと言われています。難しい専門用語はわかりませんが、講演会でも、打ち合わせの時に、「先生今日は専門用語がありますか」と説明をお願いしていますが、今はパワーポイントを使うので利用者にも便利になっています。それと、手話を表すだけでなく、対人援助なので、通訳者は、話し手と聞こえない人の関係が円滑になるための援助活動にも気を使います。その人に合った通訳が一番大切です。

中途失聴の人も

―聾唖者は、みな手話が読めるのですか。

神作 すべての人が使えるとは言えません。きちんと教えるところがないからです。できる人はどこで学んだかというと、聾学校です。今は手話のできる先生が少しずつ増えています。手話は先輩や友達関係の中で学びます。「手話を盗む」と言っています。ただ、昔は聞こえない人や障害を持つ人に対する差別などがあり、学校にも行っていない人がいます。しかも、昔は口話主義で、学校で手話を使うのを禁止していました。今の高齢者は教育の機会が少なかったのです。

―聾学校はどこにありますか。

神作 埼玉県の聾学校(特別支援学校)は坂戸と大宮の2校あります。昔は盲聾で1校しかありませんでした。

―聞こえない人はどのくらいいるのですか。

神作 私たちの区域で、聞こえない人のグループは17名ですが、登録していない人も多いと思います。

―皆さんどのような原因で聞こえなくなったのでしょうか。

神作 先天性の方もいますし、中途失聴、難聴の方もいます。難聴と言っても、お産の翌日聞こえなくなったり、ストレスから聞こえなくなった人もいます。そういう人が一番大変だと思います。ただ、年をとってから手話を覚えることは難しいですね。

―最近はスマートフォンなど電子機器の普及で、聾の方もコミュニケーションの幅が広がってきています。

神作 タブレットやスマホはみんな使っています。ただ、「行く」、「行かない」、「ダメ」などはっきりした言葉の方が通じます。手話には、「てにをは」がないので、あいまいな言い回しでなく簡単な文章の方が通じます。

手話は技術だけではない

―長く手話をやってきて思うことは何ですか。

神作 今は養成講座もあり、最短で3~4年で技術は学べ、若い通訳者が増えてきております。ただ、手話の技術を習得しても、対人援助ですので人間力も必要だと思います。それぞれの方に合った手話をしないといけません。その辺を伝えていければと思っています。

―一般に障害者の支援には何が求められるといえますか。

神作 今私は、「あいサポート運動」のバッジをつけています。これは鳥取県から始まりました。障害は耳が聞こえないだけでなく、目が見えない、知的障害、精神障害の人もいる。自分も年を取り助けることはできなくても、困っている人がいたら声をかけるだけでも支えになります。お互いに見守り合える世の中にできたらよいと思います。

約300軒に1人の民生委員

―民生委員をされている。

神作 5期目(1期3年)に入りました。民生委員はボランティアの最たるものだと思っています。担い手がなかなか見つからない現状です。

―担当区域は。

神作 富士見市の上沢2丁目の担当です。1人で170~360軒が基準になります。2丁目に2人います。

―市から委嘱されるのですか。

神作 民生委員推薦準備会→民生委員推薦委員会→市長→県知事→厚生労働大臣のような流れで、厚生労働大臣から委嘱されます。

高齢者の見守り

―仕事は。

神作 高齢者の方への対応がほとんどです。福祉全般を見るということですが、少子高齢化が地元でも進み65歳以上の世帯が多くなっています。障害を持つ方もいますが、老人が圧倒的に多い状況です。

―高齢者の方にどのように対応するということですか。

神作 安否確認とか見守り、あるいは何かあった時に、役所、高齢者あんしん相談(「えぶりわん」)へつなぎます。

―300軒もあったら大変です。

神作 それぞれの家庭を訪問し話を聞き現状を把握したり、近所の方からの情報提供で訪問することもあります。最低月1回は回るようにしています。あとは、風邪ひいたとか具合が悪いと聞いたら、訪ねて話し相手になったり、社協のお知らせ、シルバーかわら版などを届けた折に相手の話を聞くようにしています。

―自宅を訪問して生活の手助けもするのですか。

神作 私たちは、お宅にうかがいますが、上がることはありません。玄関先でお話しをするだけです。お年寄りが具合が悪く、食べられないといっても、手作りのモノをあげてはいけないことになっています。

―今の時代は、訪ねて行っても会えない人も多いのではないですか。

神作 男性の一人暮らしの方は、インターホンで、「どうした?生きている?」など冗談を言いながら話をしたり、ファンヒーターが動いていれば、元気だなとか。

―逆に家族がいるお年寄りは民生委員さんの訪問が必要ない場合もあるのではないですか。

神作 家族から見ると、「父親はこんなものだから大丈夫」と思われるかもしれませんが、私から見ると、ちょっと危ないのではないかと思うこともしばしばです。その場合、介護保険の申請方法や行政の窓口などの情報提供をしています。

生活保護者

―生活保護の世帯もあるわけですね。

神作 生活保護の方の見守りもあります。最近保護家庭は増えています。

―なぜ増えているのでしょうか。

神作 若い人には、生活できなくなったら役所の前で倒れればいいという人もいるとメディアなどで聞きますが、働く場を見つけるのが難しいのか、意欲が浅いのか難しい問題だと思います。

―生活保護制度は行き過ぎだという意見もあります。

神作 確かに保護を受けている人に対する批判を持ち私にいろいろ言ってくる人もいますが、今困っている人がいたら行政も対応することが必要です。そこからどう自立させていくかが大切だと思います。

―民生委員のなり手がいないのですか。

神作 民生委員は給与はありません。活動費として年8万円ほどいただいていますが、いろいろ出費もあります。このお金のためにやっている人は皆無です。現在60歳くらいの人たちは皆仕事を持ったりして、町会長も委員を探すのに苦労している状況だと思います。

老人会の役員

―老人会の役員もされている。

神作 上沢1~3丁目の上住会という老人会の副会長と富士見市老人会連合会女性部会 副部長をしています。

―老人会とはどのような活動を。

神作 娯楽です。老人が明るく元気にが目的です。上住会として2ヶ月ごとの誕生会、 旅行(年2回、2泊3日)、美化運動(空き缶拾い)など。また市の老人会として、春(2泊3日)と忘年旅行があります。

―老人会は行政からの支援があるのですか。

神作 行政から少ないですがあり、3町会からも補助をいただいています。役員は全部ボランティアです。

―何人くらいが参加しているのですか。

神作 上住会は、今70名ほどです。「家にこもらず、みんなで歌って踊って楽しく遊びましょう」と、参加を呼び掛けています。

ボランティア活動で、人と触れ合える

―神作さんは地域で他にどのような活動をされているのですか。

神作 社協、ボランティア連絡協議会、町会などでお手伝いをさせていただいています。

―それだけ、いろいろな活動をされて、社会貢献意識が強いですね。

神作 私がボランティアをやっていて思うのは、そんな高邁な意識を持たなくても、人と触れ合って、仲間ができると、楽しみになるということです。ただ、ボランティアは、自分が健康でも家族の理解がないとできないと思っています。私も毎日あちこち出歩いていますが、常に家族には感謝しつつ活動を続けています。

(取材 2017年1月)

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