その後十文字は自彊術の普及を精力的に進めた。大正時代末期には、自彊術をやる人は300万人とも言われ、一大ブームを巻き起こした。しかし、十文字の死後、太平洋戦争も始まり、自彊術は衰退に向かう。
昭和の半ば、中井の高弟から自彊術を会得した久家恒衛翁に、医師であった近藤芳朗博士とその妻・幸世が出会う。近藤夫妻は自彊術の効用を実感し、体操を医学的に研究するとともに、普及活動に乗り出した。昭和49年に設立した自彊術普及会は、62年には社団法人(その後公益社団法人に移行)として許可された。
現在は、全国に約4千教室、会員は約5万4千人を数え、愛好者は着実に増えている。ただ、中高年層、女性が多く、若年層に広げるのが今後の課題という。
自彊術は座ったり、立ったりした姿勢で、器具もいらず狭い場所で1人でできる。所要時間は15分ほど。31動作から成り、マッサージ、指圧、按摩、整体術、呼吸法などの手法が取り入れられている。全身の関節を動かし、脊柱の矯正、血管機能、自律神経の改善などをもたらすという。
自彊術で、体調や心の状態が改善する。病気への効果については、1985年に実施した自彊術励行者に対するアンケート調査がある(第22回北京国際運動医学学術会議に論文発表)。治療のため行っている人のうち病状が好転したと答えた人が96%。特に、狭心症、腰痛、頭痛、胃腸炎・便秘症、自律神経失調などの効果が大きいという結果だった。
テキストやDVDも販売され、独習もできるが、自彊術普及会によると、自己流でやると型が崩れるので、近くの教室に通った方がよいとのこと。
自彊術普及会本部
(本記事作成には、『自彊術で若返る』(自彊術普及会監修、ベースボール・マガジン社)、自彊術普及会ホームページ・取材などを参考にしました)
(公益社団法人自彊術普及会 東京都北区中里2-14‐1 03-3940-6696)
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