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長谷川清の地域探見(20)今年の干支は甲辰(きのえたつ)

新年あけましておめでとうございます。

昨年は、コロナ禍が落ち着きをみせて多くの方々がホッとされていたところに自民党の政治資金に検察の手が入って大騒ぎとなりました。海外ではロシア・ウクライナ戦争に加えてイスラエルとパレスチナ過激派のハマスとの紛争が激化、アジアでは中国による台湾侵略観測や北朝鮮の戦略ミサイル開発などもあってキナ臭い話題がマスコミを賑わしています。

 こうした中で迎えた2024(令和6)年は、十干が甲(きのえ)、十二支は辰(たつ)の甲辰(きのえたつ)とされ、60年に一度の「新しくかつ前向きな変化が形になって現れる年」になると期待されます。

過去の甲辰では何が起きたのか

甲辰(きのえたつ)の年には「新しくかつ前向きな変化が形になって現れる」となれば、過去の甲辰でもそうした事象があった筈です。日本で起きた過去の甲辰を振り返ってみましょう。

 60年前の1964(昭和39)年には、3月に早川電機(現・シャープ)がトランジスタを、ソニーがダイオードを使った電子式卓上計算機を完成し、その後の電子工業の先駆けとなりました。10月には東京・新大阪間の新幹線が開業し、東京オリンピックが開催され、奇跡と言われた経済の高度成長のスタートを飾りました。

 120年前の1904(明治37)年には、2月に日露戦争勃発、翌年8月に日本の勝利で終結して世界に日本の存在を強く印象付けました。ただし、図に乗った軍部とその支援者たちが独走して中国大陸に侵攻し、太平洋戦争に至ったのは残念です。

 180年前の1844(弘化元)年には、オランダ国王が徳川幕府に書簡を寄せて世界情勢を説き、開国進言をしました。その9年後の1853(嘉永6)年には米国東インド艦隊司令長官ペリーが浦賀に、露国プチャーチンが長崎に来航して開国を要求、彼らの圧力に屈する形で幕府は翌1854年(安政元)に米国、英国、露国とそれぞれ和親条約を調印し、開国に至りました。甲辰の1844年は、徳川幕府が鎖国を解き、明治時代に移る出発点だったと言えるでしょう。

 私が期待する新たな動き

 このようにざっと眺めただけでも、甲辰の年にはその後の歴史に繋がる事象が確認されます。2024(令和6)年に私が期待している動きは次の3つです。

  • 第一は、日本の大陸棚が拡大することです。大陸棚の延長に関する米国との調整が終了して、2024年春には小笠原諸島の父島東方に位置する「小笠原海台海域」の大部分を日本の大陸棚と定める政令が発出されます。これにより日本の支配海域が拡大するだけでなく、レアメタル(希少金属)など海洋資源開発に力が入り、日本が世界有数の資源国に脱皮する可能性が高まります。
  • 第二は、2024年が期待されていた水素エネルギーを活用したFCEV(Fuel Cell Vehicle、燃料電池車)の普及が進む年になることです。昨年11月にトヨタ自動車が発売した新型クラウンFCEVタイプに続き、FCEVの開発を断念したと伝えられたホンダが米国GMと共同開発したSUVタイプのFCEVを発売します。電力インフラに依存することなく、かつガソリンにも依存しないFCEVは水素時代を切り開く有力な手立てです。
  • 第三は、世界的にも先行している日本のバイオテクノロジーが2024年にいよいよ本領を発揮すると予想されます。京都大学の山中教授がノーベル賞を受賞した再生医療に活用されるiPS細胞が有名ですが、今年は脳細胞の損傷や網膜疾患を治療する再生細胞薬の製造販売が実現しそうです。再生細胞薬SB623を開発製造するベンチャー企業のサンバイオ社は、今年春にも厚生労働省から承認が下される旨のIRを公表しています。同社の再生細胞薬が認可されると、先行したiPS細胞と併せて日本は再生医療で世界をリードすることになります。

甲辰の年に成長する草木は種々雑多で、美しい花を咲かせて人々を喜ばす草木だけでなく、人々に災禍をもたらす毒草もあるでしょう。2024年以降、各種の毒草が蔓延って日本社会の混乱が増幅するかも知れませんが、その中で我々が生き残っていくためには、個々人が龍のような力強さと思考の柔軟性を兼ね備えた強かさを持たなければならないと私は思っています。

つまり今回の甲辰は、日本社会に棲む我々の大部分が新たな時代に合わせた自己改革を進めざるを得ない年となるでしょう。貴兄はどの様な自己改革に取り組むのでしょうか。私の方は、取り敢えず早寝早起きの健康生活に挑戦いたします。それが出来たら貯金に読書。難しいことはその後で。

長谷川清:全国地方銀行協会、松蔭大学経営文化学部教授を経て2018年4月から地域金融研究所主席研究員。研究テーマは地域産業、地域金融。「現場に行って、現物を見て、現実を知る」がモットー。和光市在住。

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