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驚きの精巧さ
古民家の模型

のふるさと館
(秩父市)

  名勝長瀞から秩父市街に向かう国道40号沿いに建つ「哀愁のふるさと館」。外観は殺風景だが、中に入るとあっと驚く。古民家のミニチュア模型がズラリと並ぶ。どれも現地に足を運び調べ、本物そっくりに再現した。建具、家具調度品から縁の下のクモの巣まで、精巧さを極めている。大きな家は仕上げるのに数年かかる。製作者で館長の逸見雄一さんは、睡眠15時間、寝る間も惜しんで50年間、古民家模型づくりに没頭している。
 

50年模型を作り続ける

―逸見さんはいつからこのような模型を作られているのですか。

逸見 18歳の時からです。私は昭和27年生まれですから50年になります。展示を始めたのは平成元年からです。

―どのような思いから。

逸見 元々子どもの頃からプラモデルとかモノを作るのが好きでした。古い家がどんどんなくなっていくのを見て、何とか残したいと思いました。最初は写真を撮っていたのですが、それより、立体で残しておけば、裏も横も中も見られます。

―ご出身は。

逸見 ここ(秩父市黒谷)に実家がありました。養蚕農家で、自分の家も記念に残しておこうと20年ほど前に大きく(模型を)作りました。


逸見さんの実家の模型

―仕事は何を。

逸見 電機メーカーに10年近く勤めました。しかし会社では残業や休出が入ります。そんなことでは模型ができないと、辞めました。今はこれが仕事です。


全国120軒の古民家の模型

―こちらに展示してある家の数は。

逸見 120以上あります。

―すべて古民家ですか。

逸見 ほとんどそうです。現在のもあります。この間まで商売やっていたうどん屋です。

―どのくらいの縮尺ですか。

逸見 一番見やすく多いのは20分の1です。小さいのは80分の1、一番大きいのは13分の1。大きいと置く場所に困ります。

―古民家はどの地域の。

逸見 青森から沖縄まで全国です。

―大きいのはどんな。

逸見 野口英世の家、京都・伏見の藤原家、会津の塩川集落など。

現地で泊まり込んで調べる

―実際に現地に行って調べるのですか。

逸見 お願いして泊めてもらいます。しかし泊まっていいよと言われるまで時間がかかる。酒を持っていったり。たとえばこの家(京都の藤原家)は2週間泊まった。さらに通いが半年。京都に友達がいたので、一緒に暮らして。


藤原家裏側(灯りがあるのは風呂の脱衣所)

―どれも作るには技術がいります。

逸見 全部自分でやらなければならない。急所急所は、骨組みは大工、石垣は土方、屋根は屋根屋、壁は左官屋と、プロに教わっています。特に壁は難しい。面積が皆違う。泥をどれくらい使ったらよいか。カンの世界です。

―材料は。

逸見 すべて自然の素材です。

―茅葺き屋根はどうするのですか。

逸見 国内では入手できず、東南アジアから輸入しています。


茅の素材

―屋根もしっかりできています。

逸見 普通のサイズで茅を300万本使う。60キロあり、1人では持ち上げられません。「野口英世の家」は8000万本、「逸見家」は5000万本使っています。

石をそろえ組んだ石垣

―「藤原家」にある石垣はどう作るのですか。


石を組み上げた石垣

逸見 土方の親方に石の組み方を教えてもらった。接着剤は一切ありません。樹脂を使うと、よくもって145年で粘着力がなくなる。(「藤原家」の模型を)東京まで運んだことがあり、多分崩れると思った。石は軽いし、土のついている面積も狭い。しかし全然大丈夫でした。土方に聞いたら、こういう組み方なら震度7でも平気だと。

―石はどこから。

逸見 落ちている石を探します。石の形もあるし、色合いもある。でかすぎても小さすぎてもダメ、全部そろわないと。外に石を拾いに行き、これは使えそうと1000個くらい持ってきて、その中でひどい時は使えるのは1個です。

生きたクモが作った本物のクモの巣

―縁の下にクモの巣が張っています。


縁の下にクモの巣が

逸見 クモの巣は生きたクモが作った本物です。クモの習性を研究して風を当てて張らせました。クモによって違い、風ではない種類もあります。

―作るのにどのくらい時間がかかるのですか。

逸見 「藤原家」で51千時間。120時間作業、昼寝入れて5時間睡眠で7年です。仏壇だけで18ヶ月。会津・塩川村は39000時間。会社行っていたら20年かけてもできあがりません。


仏壇

―できた家を売ることはあるのですか。

逸見 頼まれて作ることはありますが、大きいものは売ることはしません。展示するだけです。欲しいという人もいるが、買えないでしょう。500万円以上はかかっている。

ここまでやる人はいない

―このようなことをされている人は他にいるのでしょうか。

逸見 ここまで作っているのは日本にはないでしょう。ここまで来るのに30年かかった。 10年じゃ20年じゃ無理です。新品の木を100200年にどう見せるか。仏壇の中に阿弥陀如来、位牌から線香立てまで全部入っている。模型作っている人でも仏壇は難しくてできないと思います。

全国から来館者

―よくテレビに登場されますね。

逸見 NHK、民放と何回か。

―展示館に来られる方はどうですか。

逸見 全国から、海外からもいろいろな方が来てくれてありがたい。ただ、大勢で来ても、ろくに見ないで帰られる方もいる。見てもらうために作ったので、見てくれるのがうれしいです。

―逸見さんは目は悪くないですか。

逸見 近いものは0.1ミリでも見えます。同年齢の友達は皆目が悪くなっているようですが。

―今はどんなものを。

逸見 今手がけているのは、朽ちていく廃屋です。廃屋は難しい。遅くとも来年1月には完成します。これからはより難しいものに挑戦していきたい。

(取材202110月)

 
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