例によって軽い本ばかりだが、面白い本をいくつか読んだので紹介したい。
第一に、『相続地獄』(森永卓郎、光文社新書)。著者は経済学者だが、よくテレビにも出て半ばタレント化している。私はかつて旧職の研究所で同僚だったことがある。優秀で努力家で面白い人である。この本は、父親の死後様々な処理に追われた体験を書き綴ったものである。具体的で実感がこもっていて参考になる。それとともに、この本の面白さは、相続とは別の森永さんが建てた「B宝館」の内容、顛末、週末農業体験について語っている部分である。
次に、『還暦からの底力』(出口治明、講談社現代新書)。著者は還暦でライフネット生命を創業し古希でAPU(立命館アジア太平洋大学)の学長に就任された方。私は起業で成功した高齢者の鏡のような人と思っていた。今回初めて著書を読んで驚いた。古今東西あらゆる分野にわたる博識とその分析力だ。起業はたまたまであって、何でもできる知の巨人のような人であろう。世の中や歴史の見方が変わります。
第三に、『ひとりで老いるということ』(松原惇子、SB新書)。著者は1947年生まれ。おひとりさまの終活を支援するNPO「SSS」を運営されている。この本は活動を通じて知った人たちのエピソードを紹介しながら、高齢女性を取り巻く様々な問題を取り上げている。とにかく面白い。動画を見たら、著者は70代とは思えない華やかできれいな方である。歌もうたう。その前向きの生き方が、暗くなりがちなテーマを明るくしているように感じる。
第四に、『老後レス社会』(朝日新聞特別取材班、祥伝社新書)。これだけは面白くない。老後の悲惨さを取り上げるということで、切り口はよいのだが、世の現状を嘆き、すべて格差、制度、政策のせいだとする、例によっての朝日スタイル。思考停止している。唯一興味を引いたのは、今流窓際族の「妖精さん」の項。
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