エリザベス女王の逝去ニュースの影に隠れた感があるが、野田一夫氏が亡くなった。95歳、老衰という。私が旧職で駆け出しの時代、強烈な印象を受けた方である。昔、永田町に北野アームスというしゃれたビル(マンションかホテルか?)があった。そこに設立間もない財団法人日本総合研究所というシンクタンクが入居しており、所長が野田氏だった。私は仕事上の用事があって野田氏に会いに行った。野田氏は若輩に対してもにこやかに、ていねいに応対してくれたが、その時の話で今でも印象に残っていることが2点ある。一つは、野田氏はそれまで立教大学教授を務めていた(その当時も兼務だったかもしれない)が、先生という仕事は研究室にこもり辛気くさく、自分はもっと社会的な活動をしたくてシンクタンクを作ったということ。そのような考え方があることが新鮮だった。確かにその研究所はプールやバーも備え、研究所というイメージとは異なっていた。2点目は、用事が済んで帰ろうとすると、オフィスにある家具類をこれは自分が作ったのだと言って、楽しそうに説明してくれたこと。手作り感は見えない、りっぱなオフィス家具で、驚いた。
野田氏は、とにかく人を惹きつけてやまない力があり、人脈も広かった。その後ニュービジネス協議会、多摩大学、県立宮城大学、事業構想大学院大学など、次々と新しい事業体の設立に関わる。ソフトバンクの孫氏やパソナの南部氏ら、日本を代表する起業家に対しても指導する立場にあった。私は、若き日の接点以外、会議の席などで遠目に会う程度だったが、何年か前に書かれた『悔しかったら、歳を取れ』は面白く読ませていただいた。魅力ある大人物だったと感じます。