武者小路実篤(1885~1976)は、70歳から亡くなる90歳まで20年間東京・調布の「仙川の家」に住んだ。現在は調布市により実篤公園が保存整備、公開され、隣地に記念館が建っている。秋の連休に訪れた。実篤が一体どういう家を作ったのか、特にどのような庭にしたのか興味があった。それまで三鷹に大家族で住んでいたが、幸運な偶然も重なり、理想としていた土地が見つかった。条件は①庭に水があること②土器が出ること③土筆(つくし)が生えていること。面積1500坪、崖線の傾斜地で湧き水が湧き池が3つある。大きな池が下の池と上の池。斜面であることもあり、変化と躍動感を感じる庭だ。
家は山口芳春という人の設計で、和風住宅だが重厚とか豪華というつくりでなく見た目はシンプル。内部は採光が多く明るく、非常に機能的である。ここに使用人も置かず安子夫人と2人で暮らし、昭和51年2月6日に夫人が亡くなると、その死を知らぬまま実篤も4月9日に死去した。