昨年秋以来の世界的な経済の落ち込みは、少なくとも戦後では一度も経験したことのない急激なものであったが、足元ではちらほら明るい指標が出てきている。近く発表される1-3月のGDP成長は大幅なマイナスでも、4-6月はプラスに転じるとの予測が大勢になっている。
株価も、3月10日にバブル崩壊後の最安値を更新してからは上昇基調にある。こうしたことから、専門家の間にも、景気はすでに底入れした、あるいは近い将来上昇に転じるとの、楽観的な見方も出ている。
私の見方は、足元の好転は一時的なリバウンドに過ぎず、遠からず経済は再び下向きになり、次の落ち込みは前回よりさらに深くなるというものである。
一部に、在庫調整が進展したから景気は回復するとの指摘もあるが、在庫調整だけで景気が上向くことはない。これまでの大幅な減産の結果、在庫が減れば、多少減産ペースは緩むだろうが、最終需要がついてこなければ本格増産に向かうことはない。
もし、足元のリバウンドがなければどうなっていただろう。足元で製造業の生産量は全体で前年比30%程度減少しており、業界によっては50%以上落ち込んでいる。企業収益も、わが国「最強企業」のトヨタ、ソニーをはじめ軒並み大幅赤字を計上している。もしリバウンドがなければ、経済規模がゼロに向かって収縮することを意味する。それは経済の破綻である。
人間が生活し、社会が従前通りまわっている限り、ある程度リバウンドする、のは必然である。しかしここから回復が持続するのは難しいと考える。なぜなら、これまで半年間の急降下のマイナスの波及がこれから始まるからである。企業は収益の悪化に対応して、経費を絞り、夏のボーナスも過去最大の減額見通しである。需要減少のマイナスのスパイラルがこれから起きてくる。
ほとんどめちゃくちゃなばらまきである補正予算による大型の景気対策は確かに一定の効果はあるが、下向きの力が強く、しかも高齢化の進展、年金社会保障への不安から、中長期的にも悲観が勝る日本において、政策で経済を即持ち上げるのは不可能と考える。
回復が可能になるのは、経済が落ちるところまで落ちて、海外環境もよくなり、政策の効果も浸透してきたころで、私は来年以降であると考える。
ただ、今回の景気落ち込みは輸出型製造業が主導しており、地域に目を向けるとそれほどの影響を受けているわけではない。地域経済、産業は景気が長期上昇を続けているときも恩恵を受けていたわけではなく、言ってみれば長期的な低迷がそのまま持ち越されているようなものである。
今回の世界的な経済の陥落が、グローバル化、金融の肥大、IT先端技術、不動産バブルに起因するとすれば、それらに疑念の生じた今、地域の資源が、次の時代を拓くかもしれず、不況を地域企業のチャンスととらえたい。
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