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官僚と接待

 私がかつて大手紙の記者をしていた時、担当していた役所の幹部たちと忘年会だったか宴席を囲むことがあった。その時、私の前に座ったのは当時から将来を有望視されている官僚の一人だった。実際彼はその後、事務次官、政府機関のトップに上り詰める。
  その時私は、「お酒がお好きそうで、このような機会が多くあっていいですね」というようなことを言った。彼の答えは、「とんでもない。仕事で酒の席には出ますが、楽しいと思ったことはありません」というもの。
 その後、私の大學の同級生でやはり役所の幹部となっている人と同じ話をした時も、返事は同じ。「役人は忙しくて早く家に帰りたいと思っても、仕事で仕方なく付き合いに出る」というものだった。
 もちろん、中には企業による接待に喜んで参加したり、要求する役人もいるだろう。しかし、多くの役人は、仕事の一部だと位置づけてこなしているのではないか。役所は交際費を計上できないので、経費は企業側が持つ。これは悪しき慣習である。だが、いずれにせよ、役所は業界の実情と本音を知る必要があるし、企業側は政策の行方を知り、自分たちの状況を理解してほしいし、あわよくば自社を取り立ててもらいたい。そのような動機で、官僚の接待は成立する。互いに節度を持った官民の交流は必要である。収賄に類することがあれば別だが、単に接待に出ただけで非難するのは酷であるような気がする。

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