東上沿線で最大、かつ最も有名な企業と言えば、スーパーのヤオコーだろう。
小川町出身の川野幸夫会長が育て上げ、川越に本社がある。24年間増収増益を続け、今や「日本一元気なスーパー」と評される。
ヤオコーは2012年に、川越市内にヤオコー美術館を開いた。そのいきさつ、ヤオコーの経営などについて、1月16日、川野会長が同美術館で講演した(主催はNPO法人武蔵観研)。
川野会長は講演で、通常の安売り方スーパーとは一線を画し、「食生活提案型スーパーを目指す」、パートさんを大事にするなど、経営の行き方を熱っぽく語った。
ヤオコー美術館は、洋画家の故三栖右嗣氏の作品を展示。建物は世界から注目されている建築家、伊藤豊雄氏の設計。ヤオコーの創業120周年事業として2012年にオープンした。
ヤオコー美術館に関する川野会長の話の概要は以下の通り。
・三栖画伯との縁は、30年ほど前、旧玉川村(現ときがわ町)に三栖氏がアトリエを開き、母(ヤオコーの実質的創業者である故川野トモさん)がコスモスの絵を購入したのに始まる。その後、自分や弟(川野清巳前社長)が個人で作品を集めた。川越本社を建てた時も絵を購入して各階に展示した。
・ヤオコー美術館は、ヤオコーの創業120周年事業として開設。お付き合いがある三栖先生の作品専門の展示とした。また幸運な縁があり伊東豊雄先生に設計を依頼できた。建物を見にこられる人も多い。
・美術館のスタッフは、スーパーの「パートナー」さん(パート)から希望者を募って配置している。
・開館から2年たち、少しは皆さんに喜んでもらえる美術館になってきたかな。今後も多くの方に来館してもらえるよう努力していきたい。1つの試みとして、夕刻、美術館ラウンジでコンサートを開いている。
ヤオコーは現在、埼玉県を中心に首都圏に132店舗を展開。24期連続で増収増益を続ける食品スーパーの優等生だ。「日本一元気なスーパー」とも評される。
ヤオコーの経営、女性の活用に関する話のあらましは以下の通り。
・消費者ニーズは多様化しており、スーパーの店づくりには、①コモデティディスカウント(安売り)型、②ライフスタイルアソートメント(ライフスタイルに対応した品揃え)型、の2つの行き方がある。②は、消費者の好み、こだわりを重視するもの。ヤオコーはこの行き方で、生鮮食品とデリカに特に力を入れている。
・顧客の要望に合うライフスタイル商品を提供するため。個店の主体性を尊重している。本部は個店をサポートするのが役割だ。
・「パートナー」さんを含め全員に権限を与え、商売に参加してもらっている。パートでも賞与もあり、できるだけ正社員に近い待遇にしている。ヤオコーの「パートナー」さんは日本一だと考えている。
・私が23年社長をやり、その後弟が6年、昨年から次男に社長を任せている。私は、あまり経営に口出しはせず、創業の精神を伝えていくのが仕事だ。また日本スーパーマーケット協会の会長としては、小売業の地位向上に取り組みたい。
・ヤオコーの経営は今は順調だが、安穏として「ゆでガエル」にならないよう常に危機感を持ち続けることが必要だ。その対策の1つが、食品スーパー最大手のライフとの業務提携だ。
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