青い空、アオイの花が咲き誇るバス停前でたたずむ少女。近くにカエル。なにかしらなつかしくなる、不思議な感覚の日本画だ。鶴ヶ島市の雨野千晴さんは、過去の想い出を描いているという。
川越市立美術館の日本画教室で
―名前は何と。
雨野 「雨野千晴(あめの・ちはれ)」。雅号というか、ペンネームです。
―日本画を描いているわけですか。
雨野 川越市立美術館の日本画教室で日本画家の小泉智英先生に習っています。
―いつから描いていますか。
雨野 14年くらいになります。たまたま、新河岸川のお花見に行った帰りに美術館に寄って日本画教室があるのを知り、思い切って飛び込みました。
―その前は。
雨野 元々絵は好きで観に行っていましたが、描くのは初めてでした。特に日本画はどんなものか、まったく知りませんでした。
自分が経験し、印象に残っている風景
―変わった日本画ですね。
雨野 先生がすごくよくて、一人一人の個性を大事にしてもらえます。私みたいな絵でも、ダメだとはおっしゃりません。
―こういう絵を描く人は他にもいるのですか。
雨野 私だけみたいですね。最初はみなさんに不思議がられて。
―どうしてこういう絵を。
雨野 想像で描いているのではと言われますが、私は想い出の中から描いているんです。何を描こうかと考えると、ふと情景が浮かんできます。それは、自分が経験し、頭に残っている風景です。
アオイ
―アオイの絵はどのような。
雨野 会社の先輩たちと秩父に行った時、暑い中にバス停で待っていたら、タチアオイがいっぱい咲いていてすごくきれいでした。
―アオイを描く人はあまりいないかもしれませんね。
雨野 日本画というとボタンとかですが、私はそこらへんに咲いている身近な草花が多いです。
―人が入っている絵が多いですか。
雨野 だいたい人がいます。
カラスとカンナ
―カラスもいます。
雨野 カラスが意外と好きなんで。カンナも小さい時の暑い夏の記憶です。
品川の海
―海が見えるところに。
雨野 品川生まれで当時は、高台の家から遠くに海が見えたんです。遠くに小さく船が見えました。
ついてくる月
―月。
雨野 小さい時、歩いているとどこまで行っても月がついてくるのが、不思議だと思っていたんです。
河童
―河童ですか。
雨野 自然が好きで、東北に行った時、沼に河童がいたような気がして。
―描く時は何も見ないのですか。
雨野 何も見ないで思い出しながらです。
自分流で楽しく
―不思議な感覚ですね。
雨野 小さい頃は空の雲が動いているのをじっと見ている子だったそうです。今はおしゃべりですが、幼い頃はおとなしくて、落ち葉が落ちるのを見てたり、変わった子だったそうです。
―絵は楽しいですか。
雨野 先生は絶対こういう絵はダメとおっしゃられないので、自分流で楽しく続けられています。
(取材2018年5月)
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