早稲田大学を散歩した。大隈庭園と、村上春樹ライブラリーにあるという村上春樹がかつて国分寺(?)で経営していたジャズ喫茶の調度品を観るのが目的だったが、行ってみて驚いた。まず2021年に建てられたという村上春樹ライブラリー(国際文学館)は隈研吾設計の独立した個性的な建築物であり、内部は地下1階から2階まで展示に使い、村上ワールドをすべて体現している。地下にはカフェもある。書斎はすごく機能的でモダンな印象。いわゆる作家の部屋のイメージではない。どれがジャズ喫茶の調度品かわからなかった。村上春樹ライブラリーのすぐ隣には、坪内博士記念演劇博物館がこれも特異な外観を見せている。
會津八一記念博物館も驚きだ。會津八一(1881-1956)は歌人で美術史家、書家だが、早稲田の教授を務めたこともある。古美術品を収集し、博物館はそのコレクションを核に、他からの寄贈を含め約2万点の収蔵品を持つという。中でも富岡コレクション展示は見物である。富岡コレクションは日本重化学工業の社長を務めた富岡重憲氏設立した旧富岡美術館の収蔵品を引き継いだもの。會津八一もだが、この富岡重憲という人物は興味深い。
近くの1号館にある早稲田大学歴史館も充実している。創立者大隈重信の生涯と理想から始まり、早稲田のすべてがわかるという内容だ。大隈の演説の音声も聞ける。カフェ、ミュージアムショップも備える。これら国際文学館、演劇博物館、會津八一博物館、歴史館は、すべて入館料無料、施設、展示内容は本格的でスタッフの配置もきちんとしており、国の博物館と遜色ない。調べると、早稲田は「大学のミュージアム化」を目指しているという。私の世代の野性的でバンカラの早稲田像は、はるか昔の話だ。