茨城県中部の笠間市。人口7万人余りの町だが、笠間稲荷神社は日本3大稲荷(他は伏見稲荷大社=京都、祐徳稲荷神社=佐賀)とされ、年間350万人の参拝客が訪れる。菊の花を神社自ら栽培し展示する「菊まつり」も毎年10月中旬~11月下旬頃に開催される。
由緒
笠間稲荷神社の御祭神は、宇迦之御魂神(うかのみたまのかみ)。生命の根源を司る「いのちの根」の神様だ。
創建は今から1370年ほど前の白雉2年(651)と伝えられる。当時この一帯は胡桃の密林で、胡桃の木の下に祠があり稲荷様がまつられていた。そのため別名、「胡桃下稲荷」(くるみがしたいなり)とも呼ばれている。
大鳥居
参道入口に大きな大鳥居がある。高さは約10m。朱色は古来魔除けの色とされている。
大鳥居
参道に入る際は鳥居をくぐる前に一礼する。参道の真ん中は「正中」と言い神様がお通りになるところなので、歩く際は、真ん中をできるだけ避ける。参拝に先立ち、手水舎でまず手、次に口元、最後にまた手の順番でお清めをする。
参道
楼門
楼門は萬世泰平門と言い、重層入母屋造。左右の随身像は境内に悪い気が入らないように門を守る神様。
楼門
楼門内側にある2頭の馬の像は神馬で、古くは生きた馬を奉納した。色が違い、白は太陽、黒は雨を表し、五穀豊穣の願いが込められているようだ。
神馬
御神木
御神木は、胡桃の木。毎年実がなる。
御神木の胡桃の木
藤棚
藤は、八重の藤と大藤の2株あり、ともに樹齢400年になる。八重の藤は珍しい種で県の天然記念物に指定されている。
拝殿
お参りは拝殿で行う。拝殿内でご祈祷を受けられる。拝殿の奥に幣殿、さらに御本殿があり、そちらに神様がお鎮まりになられている。御本殿は一般の方は入れない。
拝殿
お参りの仕方は、まず帽子やマスクをとり、お賽銭を入れたら、二礼、二拍手、一礼の作法でお参りする。
御本殿
御本殿は、江戸末期の建築で銅瓦葺総欅の権現造りで、国の重要文化財に指定されている。本殿の7つの壁面に、3人の名匠によって約12年かけて精巧な彫刻が施されている。
御本殿(裏側から)
笠間稲荷美術館
境内奥に笠間稲荷美術館がある。笠間は笠間焼が有名だが、笠間焼が影響を受けた信楽、常滑、瀬戸、越前、丹波、備前の中世の六古窯の古陶器を中心に常設展示している。秋の菊まつりに併せて、特別展の開催も予定されている。
笠間稲荷美術館
菊まつり
毎年秋に菊まつりが開かれる。今年は10月17日~11月23日まで。日本最古の菊まつりだ。期間中は境内に約5千株の菊の花が展示され、神事流鏑馬などもあり、多くの人が訪れる。
今年113回目で明治41年から続いている。日清日露戦争後、戦争で荒廃した状態から人心を和ませるため開催した。外部で菊作りをしている人が奉納し、品評会や菊人形展も行うが、大凡の展示は笠間稲荷神社の農園部で栽培された菊花だ。
菊まつり
初午祭
新暦旧暦ともに行っている。稲荷大神様が地上(京都の稲荷山)にご降臨なさったのが初午の日と伝えられている。そこから稲荷神社では午の日がご縁日とされ、特に初午の日は「事始め」、「仕事始め」の日として大切にされ、毎年多くの参拝者で賑わう。
歴代笠間藩主のご崇敬
笠間稲荷がここまで大きくなったのは歴代笠間藩主のご崇敬があり、境内地の拡張、祭祀具の寄進などがされた。また、東京・日本橋浜町には笠間稲荷神社東京別社が鎮座し、元々は旧笠間藩主牧野氏の邸内社だった。
稲荷神社は全国に3万社あると言われている。その中には笠間稲荷神社から分社分霊したものがあると思われる。
ご祈願
笠間稲荷神社でのご祈願は、多種多様あるが、稲荷大神様のご神徳から、家内安全、商売繁栄等、人々の生活に関わるご祈願が特に多いとのこと。
参道に仲見世があり、門前通りもある。名物はやはりお稲荷さん、「そばいなり」が有名だ。
(取材2020年7月)
※祭事等の開催、詳細につきましては、新型コロナウイルスの観点から、笠間稲荷神社へお問い合わせの上、ご確認ください。
笠間稲荷神社
住所:茨城県笠間市笠間1 電話:0296-73-0001
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