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障害者も熟練の技を発揮、製作した工芸品を三越で販売
旭出生産福祉園 
(練馬区)
 
 今年2月、東京・日本橋の三越本店で開かれた「旭出学園工芸展」。陶器、木工、紙製品などの工芸品が展示、販売された。実はこれらの工芸品は、特別支援学校の旭出学園(東京都練馬区大泉)に付属する旭出生産福祉園(同)の障害者たちが製作したもの。どれも、つくりは精巧で色使いも豊か、しかも価格は手ごろで、会場は多くの人でにぎわっていた。皇后陛下美智子様もおいでになり、熱心にご覧になられた。障害者でなぜこのような製作が可能になるのだろうか。旭出生産福祉園を見学させていただき、施設長の保谷文子さんにお話をうかがった。


              
                       日本橋三越で開かれた旭出学園工芸展
              
                       東京練馬区にある旭出生産福祉園

知的障害者120名が利用

―こちらはどのような施設ですか。

保谷 障害者の生活介護施設です。元々は授産施設でしたが、制度改正があり2011年から生活介護施設に移行しました。

―どのような障害者が利用しているのですか。

保谷 知的障害のある方です。合計120人。50人が入所、70人が通いです。通いの人は朝から、3、4、5時と、帰宅時刻は人により違います。昼間は、入所している方も通ってこられる方も一緒に配属し、同じ活動をします。

―ここでは皆さん仕事をしているのですか。

保谷 日中活動として、いろいろ運動したりゲームをしたりもしますが、基本はお仕事です。お仕事をできない人もいますが、グループに加わってその人なりにできることをします。

―障害者施設で仕事を活動の中心にするのはユニークな行き方と思いますが。

保谷 当園は、特別支援学校の旭出学園に付設されています。旭出学園は、生産活動、働くことは人にとって大切なことだという理念を掲げ、学校時代から生産教育、作業教育を勉強の中に取り入れてやってきています。一人一人が自分の仕事を持つことで、自信や成長につながっていくという考え方です。

―利用者は旭出学園の卒業生ということですか。

保谷 ほとんどはそうです。


タイル、木工、機織り、紙工、建材、陶芸

―どのような仕事をしているのですか。

保谷 タイルの部屋:タイルをカットして貼り、後からセメントを入れ、ニスを塗ったりして仕上げます。

              

木工:木材から加工します。

             

機織り:織機を使い、かなり複雑な仕事をします。

             

紙製品:染めた紙をちぎったり、貼ったり。

紙工:付録を袋に詰めたり、箱を作る仕事。

ブロック:スペーサーブロックという建材の製造。建物の基礎などに使う。一時、かせぎ頭でした。

           

陶芸:粘土から形を作り、絵を描き、窯で焼きます。

           

パン:パンを焼く。近所の方が買いに来られます。

消臭剤の吊りひも:比較的障害の重いグループが担当しています。

―それぞれやりたいことをできるのですか。

保谷 それぞれグループがあり、配属する時に、まず本人に向いているか、そのグループとの人間関係、気持ちよくすごせるかどうかなどを考えて決めます。なるべくなら、本人の希望したところに行けるようにはしています。一人一人の持ち味が生きるといいなと。長い間に少しずつ、仕事、グループが増えてきています。

―配属の仕事だけをするということですか。

保谷 陶芸とタイルと木工は30人くらいの大きなグループになっていて、その中で曜日により動けるようにしています。また、グループに不適応になったり、うまくいかなくなったら、他に動くこともあります。

―問題がなければ長く続けることになる。

保谷 そうです。長く続けると熟練して難しいこともできるようになります。

 

職員が勉強して指導する

―指導は。

保谷 職員です。学習はしますが、元々の専門家を採用することはしていません。職員の中で、それがきらいじゃない人に指導してもらう形をとっています。パンも、職員がパン屋さんに行って習ってきました。陶芸の人も、ここでたまたま陶芸をすることになった。

―デザインは。

保谷 自分たちでデザインするものもありますし、売れ筋のものは決まったデザインでいくものもあります。

―個人の名前で作品ができるということですか。

保谷 陶芸の場合で言えば、成形だけの人もいるし、絵が得意な人は絵だけの場合もある。誰の作品ですかと言われてもわかりません。合作です。

           
                      三越での展示

手仕事は熟練すると上手になる

―製品のレベルが非常に高いですね。

保谷 やはり長い間続けていることが大きいと思います。手仕事ですから、熟練してくると、上手になるんです。そういうみんなの力が合わさっているのではないでしょうか。


―年齢は高いのですか。

保谷 入所者は平均年齢50歳を超えています、通所でも40代。同じことを長い間ずっとやっているわけです。

―作業の環境も本格的でプロの職場と思います。

保谷 どうしたらやりやすいかを職員が一緒に考えながら、これはこの人にやらせてみたらとか、ちょっとした工夫があればできるかなと、一つ一つ改善してきた積み重ねかと思います。

―障害者でも熟練すれば健常者と同じ仕事ができるということでしょうか。

保谷 同じではないでしょうか。障害があるからできないということはありません。ここでは、自分のやっていることは何か、どういう工程か、次に何をやればよいか、本人たちが理解してやっています。

―障害者の方が気移りせず、粘り強いと言われます。

保谷 私たちなら、袋詰めしていてこれでいくらと考えたらばかばかしくなるかもしれませんが、わりと楽しんでやってくれる。持続する力はあります。

     
       三越での展示

ホームページでも販売

―販売はどのように。

保谷 日常的には、練馬区のバザーとか園内の行事とか。あとはホームページなどでお客さんの注文があれば。

―日本橋三越での展示販売は。

保谷 2年に1回です。

―皇后陛下がおいでになる。

保谷 このところ毎回お出ましいただいています。

―他に小売店での扱いは。

保谷 青山の大文字というギャラリー、そこから紹介された静岡のベルナーレビュフェ美術館などがあります。

―扱いの希望があれば応えてくれるのですか。

保谷 もちろん扱っていただければうれしいです。ただ、量産できないので。

―価格が安いですね。

保谷 三越などでは、なんでこんな値段でと言われます

―ヒット商品はありますか。

保谷 キーホルダーでしょうか。値段も手ごろなので動いていたようです。他でも、テレビに出た時は、急に注文が来たりしますが。

 

収益は利用者(障害者)に還元

―収益はどのように。

保谷 利用者さんに還元します

―仕事になっているわけでしょうか。

保谷 仕事になるほど払えていませんが、みんなもらえる工賃は楽しみにしています。売り上げがあれば還元できますが。

―今、課題は何ですか。

保谷 利用者さんは20代から上は70代の方がいます。高齢化が進んでおり、認知症の方もいて、そちらの方に職員の手間がとられるようになっています。なかなか仕事の方を十分に動かすのも難しくなってきています。

―老人施設へ移れればよいですね。

保谷 ここで知り合いの人もいるし、できるだけここにいたいというご家族の希望もあり、外に行きたいという人はいませんでした。

尾張徳川家が三木安正氏に依頼して創設

―旭出学園は徳川家と関係があるのですか。

保谷 尾張徳川家の徳川正子様に生まれたお子さんに障害があったことがきっかけで学園ができました。現在の特別支援学校の理事長も、徳川家当主の徳川恒孝氏が務めています。

―三木安正先生とは。

保谷 徳川正子様は当時障害児教育の第一人者であられた三木安正先生に依頼して学園を立ち上げられました。三木先生は、学園の運営に心血を注がれ、現在でも学園の教育には、三木先生の考えが強く反映しています。

―どのような考え方ですか。

保谷 一つは、障害者も、人として働くことが大事ということです。一生を通して、仕事を身に着けて目的を持った生活をすることで、その人の力が伸びていきます。そのため、学園では、生産人としての自覚、遊びと仕事の分化、作業意欲の高揚、作業態度の形成、作業過程の理解、生産への責任などを身につけられるような教育を行っています。

―卒業の段階で普通の人とは違うということでしょうか。

保谷 多少は違うかもしれません。

 
―他に関連施設は。

保谷 大利根旭出福祉園(千葉県香取市)、調布福祉園(調布市)、旭出調布福祉作業所(調布市)板橋区立徳丸福祉園(板橋区徳丸、指定管理者として運営)があります。

        保谷施設長

                          (取材2018年3月)


 「障害者問題を考える」(施設編)